本研究の主眼のひとつは、新史料発掘により鎌倉幕府法研究に新展開をもたらすことにある。昨年度に引き続き、佐藤進一・池内義資編『中世法制史料集 第一巻 鎌倉幕府法』(岩波書店)未収の鎌倉幕府法史料の所在把握、および調査・収集に努めた。高野山金剛三昧院、富山県宮崎文庫記念館、富山市立図書館中央館山田孝雄文庫、鶴見大学図書館などで調査を行い、学界未紹介の写本を複数見出すこともできた。 これまでの研究で、中世に追加法を付属させた御成敗式目の写本が流布していたことが判明していたが、本年度調査によって、そのひろがりについて把握することができた。この点に関しては、さらに調査すべき写本があり、今後の課題として積み残されることとなった。式目類の写本は書写年や書写者を特定できないものが大半であり、書物としての装訂や書風、訓点なども年代比定の手がかりとして重要となる。また、庭訓往来などの往来物や武家故実書など、式目類と同じ体裁で書写されるような中世の書物へも視野を広げ調査をしていく必要があることが認識された。 調査で見出した新史料を素材にした論文や史料紹介も作成中である。この研究で発見した史料の翻刻を、「史料紹介 翻刻 青山文庫本貞永式目追加 その一」として『鎌倉遺文研究』第49号(2022年4月)に掲載し、「その二」(同誌第51号、2023年4月)を掲載する準備を進めた。今後も、順次発表していく予定である。国文学などを専攻する有志の研究者と行っている『御成敗式目』古注釈の勉強会も続行しており、難解な注釈の読解を進めている。
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