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2021 年度 実施状況報告書

近世日朝関係における友好と非友好の循環構造―「善隣友好の時代」像の止揚のために―

研究課題

研究課題/領域番号 19K23106
研究機関名古屋大学

研究代表者

李 炯周  名古屋大学, 人文学研究科, 研究員 (00844862)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2023-03-31
キーワード裁判役 / 対馬藩 / 近世日朝関係 / 倭館
研究実績の概要

近世日朝関係は、徳川幕府と朝鮮政府が対等な関係を結び、対馬藩が日常的な外交や貿易といった朝鮮通交の実務を担っていた。また、対馬藩の朝鮮通交は朝鮮半島の南東部(現在の釜山)に置かれた倭館において行われていた。そして、倭館を運営する倭館の構成人員の中でも、もっぱら朝鮮との外交折衝のために派遣されたのが裁判役である。近世にわたって両国間の平和が維持され続けた理由を上手く説明することは容易ではないが、裁判役の研究によってその一端を提示できるものとして考えられる。つまり、倭館という空間で展開された近世日朝関係の有り様、とくに両国の対立や葛藤がいかにして解決へ導かれ、その結果として平和な関係が維持されたかについては、裁判役の活動実態や交渉過程を明らかにすることによって確認し得るものである。
以上の問題意識を踏まえ、①17世紀における裁判役の制度的な変遷の整理、②18世紀半ばにおける裁判役の派遣が持つ意味、③裁判役の名代派遣、④音物や饗応を介した裁判役の意思疎通についてそれぞれ研究を進め、学位(過程博士)申請論文に収録した。
以上の研究からは裁判役の両国における仲裁者としての役割を見出すことができた。18世紀以降の日朝関係をいわゆる「日鮮関係における記録の時代」というが、こうした時代においても「筋道をたて、故事先例に根拠をもった主張をつみかさねる外交方式」のみで交渉が妥結したものではなかった。近世日朝関係が「善隣」で「友好」の関係を維持し続けられたのは、日朝間で絶えず発生する対立や摩擦が様々な努力によって最終的には円満な解決へと導かれたからであり、この円満な解決は裁判役という役職の存在、そして裁判役の努力を抜きにしては語れないものと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

長崎県対馬歴史研究センター(対馬博物館)が再開館し、海外旅行も可能になったため、韓国の国史編纂委員会での史料調査が可能になった。
ただし、コロナの影響で当該施設の利用や出入国には制限や不自由があった。

今後の研究の推進方策

裁判役のみならず館守(倭館の総括者)や代官(倭館の貿易担当者)も視野に入れつつ、幅広く近世日朝関係の有り様について検討していく。このために長崎県対馬歴史研究センターや韓国の国史編纂委員会での史料調査を繰り返す予定。

次年度使用額が生じた理由

コロナの影響により海外(韓国)での史料調査に制限があり、対馬歴史研究センターも2021年の下半期に再開館した。2022年度はコロナによる制限の緩和も見込まれるため、韓国や対馬での資料調査をより精力的に行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 一七世紀の裁判役―対馬藩と朝鮮との外交折衝担当官―2022

    • 著者名/発表者名
      李炯周
    • 雑誌名

      名古屋大学人文学フォーラム

      巻: 5 ページ: 297-314

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 18世紀末における裁判役の名代派遣について(原文韓国語)2021

    • 著者名/発表者名
      李炯周
    • 雑誌名

      韓日関係史研究

      巻: 74 ページ: 187-218

    • 査読あり
  • [学会発表] 日朝交渉における裁判役の位置付け2021

    • 著者名/発表者名
      李炯周
    • 学会等名
      「訳官使・通信使とその周辺」研究会(第4回サブグループ)
  • [学会発表] 18世紀後半日朝交渉における裁判差倭(原文韓国語)2021

    • 著者名/発表者名
      李炯周
    • 学会等名
      韓日関係史学会(193回月例発表会)
  • [学会発表] 十七世紀の裁判役2021

    • 著者名/発表者名
      李炯周
    • 学会等名
      「訳官使・通信使とその周辺」研究会(第10回研究会)
  • [学会発表] 倭館における裁判役の音物贈答と饗応2021

    • 著者名/発表者名
      李炯周
    • 学会等名
      第5回東アジア日本研究者協議会

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公開日: 2022-12-28  

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