2023年度の研究実績の概要は次のとおりである。昨年度にひきつづき、大学図書館やインターネットなどを利用して研究課題に関する文献を調査し入手可能なものを収集するとともに関連する研究文献を読みすすめた。夏季には新型コロナウイルス感染症の流行の影響により中断していたトルコ共和国での史料調査を再開することができた。イスタンブルにある大統領府オスマン文書館では、新たなフォンドの公開や修復により閲覧可能になった文書史料の記載内容を確認し必要なものを複写収集するとともに、新型コロナウイルス感染症の流行期間に日本で読みすすめていたファクシミリ版の「租税規定」(16世紀にオスマン朝治下で作成された『租税台帳』に付されたもの)で不鮮明といった理由などにより解読不可能であった箇所をオリジナルの史料と照合する作業をおこなった。帰国後は大統領府オスマン文書館で収集した文書史料の読解と分析をすすめた。冬季には研究課題に関連して研究代表者がこれまでおこなった史料の解読や分析についての検証および研究内容の評価のためにオスマン朝の社会経済史研究の専門家であるイルハン・シャーヒン教授(イスタンブル5月29日大学)を日本に招聘した。その際、本研究課題に関連して収集した文書史料が経済面でのイランとアナトリアの関係史にくわえて遊牧民研究や農業技術史などにとっても有用であるため、他分野および他地域の研究への応用にむけて史料や分析結果の公開についても協議した。
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