「アテナイ性」再考―アッティカ地域史叙述・碑文研究の視点から

2020 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 19K23112
• 研究種目: 研究活動スタート支援
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 竹内 一博 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (10846083)
• 研究期間 (年度): 2019-08-30 – 2021-03-31
• キーワード: アッティカ史叙述 / アテナイ性 / 碑文慣習 / デーモス / ポリス / ディオニュソス / 奉納碑文 / フィロコロス

研究成果の概要

本研究は、アッティカ史叙述および碑文慣習の視点から、重層的な「アテナイ性」のナラティブについて再検討した。（1）ディオニュソスの到来伝承について、アッティカ北東部の二つのデーモスとアテナイ中心市の二つのディオニュソス神域にまつわるアッティカ史叙述断片の社会的文脈を明らかにした。（2）トリコス供犠暦における誓いの文言について、新たな補いと解釈を提案した。（3）顕彰決議によって授与された冠のその後について、奉納、顕彰決議、聖財目録・会計文書、法廷弁論、アッティカ史叙述断片を検討し、顕彰の記憶は冠というメディアを通じて、テクストを変えながらも様々な文脈に位置づけられていったことを明らかにした。

自由記述の分野

古代ギリシア史・碑文学

研究成果の学術的意義や社会的意義

アッティカ史叙述におけるディオニュソスの到来伝承が、場を構成する物理的なモノと多様に結び付けられながら語られていることを明らかにしたことは、アテナイ史の重要史料でありながら、その断片的な伝存状況と叙述スタイルが包括的な利用を妨げていたアッティカ史叙述断片を、様々な場から横断的に分析し、モノとしての碑文史料を軸に記憶の有り様を考えることが可能となる。また、実見調査に基づいた碑文研究は、テクストの内と外の関係を問い、テクストが成立する前後の位相を考察する点において、歴史叙述や法廷弁論のテクスト分析に応用が可能であり、時代や地域を問わずにテクストを通じた歴史研究の比較材料となりうる。