本研究は資料が所蔵されている機関に出向き、資料を実見観察し計測する作業が不可欠である。2021年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の拡大による影響をうけ、資料所蔵機関への出張に制限があることから、当初想定していた研究計画の大幅な変更を余儀なくされている。 このような状況下において、調査機関および対象資料を限定し、感染症が比較的落ち着いた時期に実見調査を実施した。調査にあたっては、3Dスキャナーおよびデジタルカメラを用いて、資料の立体形状の計測・観察、および製作技術や材質などの情報の取得を進めた。この結果、得られたデータは前年度までの材質や彫刻技術に基づく分類結果と概ね一致しており、本研究の分析視点が腕輪形石製品の生産集団の抽出に有効であることを再確認した。 こうしたデータをもとに、調査報告書の実測図や写真と比較しながら、列島広域から出土する腕輪形石製品がどのような生産体制のもとにつくられ、各地へ流通したのかについて検討した。また生産遺跡出土の未成品の観察をもとに、腕輪形石製品、とくに石釧が、どこでどのように作られたのかについて考察した。さらに、碧玉・緑色凝灰岩製の腕輪形石製品の観察によって得られた知見をもとに、滑石製の石釧にも対象を広げ、その系譜や生産体制について検討を行った。 以上の成果をもとに、列島広域に腕輪形石製品が展開するに至った具体的な仕組みについて考察を行った。本研究の成果については、公表に向けて準備を進めている最中である。
|