研究課題/領域番号 |
19K23117
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
佐宗 亜衣子 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (10532658)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 古人骨 / 古病理 / 食性 / 縄文時代 |
研究実績の概要 |
初期農耕集団では食物の栽培・加工技術の未熟さに由来する低栄養やストレスの影響に由来する痕跡があらわれることが知られている。本研究では縄文時代人骨における低栄養の影響や食性変化を示す特徴、生業や生活環境の変化を示す病理痕跡の骨考古学的な調査により、早期から晩期へと植物への依存度が高まることで縄文集団にどのような身体的影響が表れるのかを明らかにすることを目的としている。 令和元年の研究では調査対象資料の選定を目的として、遺跡の出土情報の確認や人骨の出土状況、帰属年代、標本現状の確認を行った。また、その際に四肢骨の骨膜炎痕の評価基準について検討した。同じ地域で同じ時期に属する古人骨においての骨膜炎の出現状況は遺跡により出現頻度と所見の重症度に違いがある傾向が認められた。次年度ではこの差を定量的に評価するとともに、対象地域や対象時期を増やして検討する予定である。 また、個体データにおける骨にみられる形態的特徴と食性との関係を確認する目的で、口腔の古病理痕や活動痕のデータと安定同位体値間の相関関係を分析した。齲歯率や咬耗度が高い個体はδ13Cの値が低くなり、歯槽壁の炎症スコアが高い個体はδ15Nの値が高い傾向が認められた。δ13C値に関しては、陸生資源(特にC3植物)の摂取量が多い個体ほど齲歯率が高くなることが予想された。咬耗度との関連は植物加工・調理による影響や沿岸部にサンプルが偏っていることを反映していると考えられた。また、δ15N値に関してはδ13C値の上昇率が低い点から、栄養段階の高い外洋性魚類や海獣類の積極的摂取や淡水生態系の資源の摂取による可能性があるが、歯槽壁の炎症との因果関係は不明であり、今後さらに検討する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成31年度4月に勤務先が変わり、研究室の環境を整えることから始めなければならずそれに時間を要した。また、調査対象先の施設が改修工事の影響で調査できない期間があり、さらにデータ収集を本格的に始めた2月から3月においては新型コロナ感染症の影響により他地域への移動や機関への立入りが制限または禁止されたことから、標本データの収集に遅れを生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在は、首都圏にある古人骨の収蔵機関において調査を再開することが難しい。活動が可能になりしだいデータの収集を行うこととして、それまでの期間は調査対象を新潟県内に収蔵されている縄文人骨へと計画を変更して調査を進めることにする。まずは遺跡の出土情報の確認や人骨の出土状況、帰属年代、標本の確認を行い、調査対象の資料の選定する。その後、口腔衛生指標、骨膜炎痕跡、推定身長などのデータを収集して分析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3月の学会が開催中止になり、旅費が必要なくなった。調査対象を変更したことで、年代や食性分析が新たに必要となると思われるので、分析費用に使用する。
|