研究課題
本研究では、古墳への漁具の副葬について、前期から中期を中心に再検討を進めている。最終年度の研究において明らかになったのは、以下の点である。第1に.4世紀から6世紀前半にかけての「海の古墳」は、近畿中央部を中枢として各地の地域政権が主に海上ルートで相互に連携することで構成される倭王権の統治原理を鋭敏に示している点である。古墳時代前期から中期にかけて、倭王権の中核となる近畿中央部政権が圧倒的な求心力をもっていたが、地方政権も一定の存在感を示していた。その状況下での統治原理を示しているのが、該期の「海の古墳」の様相である。第2に、6世紀後半から7世紀にかけての「海の古墳」は、中央政府の主導による産業地域分担を保証する山野河海交通路を基軸として編成された、海辺のさまざまな生産-貢納-生業-祭祀組織を反映している。これは、政治史のみならず地域の生業史上の大きな画期をもたらした。この動きが、海の古墳にも明確に反映していると考えられる。さらに、「祭と葬との分化」論の考察を基軸とした古墳時代倭王権・地方政権論の構築をめざし、生産用具全体を俯瞰した形で、首長層による地域経営の実態解明に取り組んだ。とりわけ、中期から後期にかけて列島各地で認められる土器集積遺構に鉄製生産用具が供献されている類例を通して、地域社会の一般成員、とりわけ海辺に居住している構成員がいかに地域内の生業と生産とに関与していたのかについて、理論的な課題にも論及しながら、考察を深めた。
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