研究課題/領域番号 |
19K23124
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
田中 祐未 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (60840212)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 絵馬 / 船絵馬 / 地理情報システム / 文化財 |
研究実績の概要 |
本研究事業の目的は、北海道内の社寺に現存する船絵馬について、保存や活用の方法を検討し、試行することである。具体的には、従来から行われてきた手法(先行研究の把握や、現地調査によって得られた情報の整理)に地理情報システムを取り入れる。位置情報を利用することによって、各地域、各社寺ごとの分析が容易になり、船絵馬研究に新たな知見を加えられる可能性がある。この構想を、令和元年度秋から令和2年度末までの事業期間を利用し、積丹半島周辺の地域に限定して実践する。令和元年度の成果は、以下のとおりである。 1)現地調査と報告:余市町(よいち水産博物館)、岩内町(岩内神社)、寿都町(町内の神社8件、寿都町総合文化センター)において、絵馬の撮影や採寸を実施し、Excelと地理情報システムを利用して情報整理・分析を行った。このうち、寿都町で確認した絵馬140点(船絵馬に限らず、他の画題も含む)については、2019年度北海道博物館紀要に調査報告を掲載した。 2)既存の調査記録のデジタル化:研究代表者が所属する北海道博物館に保管されている、過去の絵馬調査記録写真(1980年代~1990年代ごろに撮影。北海道各地の社寺の調査記録)のデジタル化に着手した。本研究事業の対象地域である、積丹半島周辺で撮影された写真を優先してスキャン作業を進めている。その過程で、これらの記録写真には、今となっては、現地調査を実施しても確認しえない情報(所在不明の絵馬の見た目や、この数十年で劣化が進んだ絵馬にもともと記されていた墨書など)が含まれていることがわかった。 3)一般に向けた発信:北海道博物館所蔵の船絵馬について、博物館発行の定期刊行物「森のちゃれんがニュース」で取り上げた。ここでは、状態が良好な船絵馬と、激しく破損した船絵馬の2点を紹介し、それぞれが持つ史料的価値について解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究事業の期間を通して、計19件の社寺で現地調査を予定しており、令和元年度は計11件(当初は予定していなかった神社等も含む)について、調査を実施した。引き続き、積丹町や泊村等において、調査を実施する予定である。 また、地理情報システムを用いて調査結果を可視化することができた。今後は、分析の方法を検討し、最終年度のまとめとして報告することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの影響による外出自粛要請の状況などを考慮しながら、可能な範囲で、下記のことを実施し、最終年度のまとめとする。 1)今年度の前半に、過去の絵馬調査記録写真(北海道博物館保管。1980年代~1990年代ごろに撮影)のうち、積丹半島周辺で撮影されたものについて、デジタル化作業を完了させる。 2)社会的状況を考慮しながら、可能な範囲で現地調査を実施し、Excelと地理情報システムを利用して情報整理・分析を行う。調査地については、必ずしも当初の予定どおりでなくても、本研究事業の目的(地理情報システムを用いた船絵馬研究の試行)を果たすことは可能なので、地域ごとの状況や先方の意向に沿いながら、柔軟に対応する。 3)令和2年度末に、本研究事業を通して得られた成果について、報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は、採択後、雪が降り始める前に取り急ぎ現地調査を実施し、その後はデータの整理や調査報告執筆などに時間を割いたことが主な理由である。令和2年度には、1)今後の調査・情報の整理・分析等に必要な物品や文献の調達 2)調査対象地域における現地調査 3)地理情報システムの専門家に意見を求めながら、分析の方法について検討すること を予定している。
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備考 |
「2点の船絵馬から読み取れる制作方法」 森のちゃれんがニュース (19) 2 - 2 2020年3月
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