2020年度は、前年度に続き、積丹半島周辺地域における調査を予定していたが、コロナウイルス感染症問題の影響で、計画通りの調査は叶わなかった。しかし、前年度の成果や過去の記録写真を用いて、以下の活動を行うことができた。 (1)地理情報システムを用いた、調査結果の可視化:前年度の時点で、寿都町内に現存する絵馬140点分の調査を実施し、その成果を、地理情報システムのソフトウェア「QGIS」を用いて可視化することができた。さらに、本年度は、パソコンにDVDを読み込むだけで調査成果を地図上で閲覧できるシステムを委託制作した。本システムは、地域別の現存絵馬数を表示できるほか、画題等による絞り込み検索が可能な仕様とした。調査成果は、調査地の協力機関へ共有することにより、意見交換を行い、今後の研究に役立てる所存である。また、本システムは、新たに調査した地域の情報を追加することも可能である。今後、調査範囲を広げ、その結果を地図上に反映させることによって、北海道内の現存絵馬の分布図を作成していきたい。 (2)過去の調査記録のデジタル化:代表者所属機関(北海道博物館)に保管されている、1980~1990年代の絵馬調査記録写真の一部をデジタルデータ化した。そのうち、寿都町で撮影された写真について、前年度作成した絵馬140点分のExcelデータベースに、新たに過去の記録写真を参照するための欄を追加し、過去の調査と前年度調査の写真を見比べられるようにした。その結果、絵の具の剥落や虫損が進んだ絵馬が複数確認された。この事実は、①過去の記録写真が、現在では確認し得ない情報を伝える貴重な史料であること②未調査地域の現地調査を実施し、現状を記録することが喫緊の課題であること を示している。
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