研究課題/領域番号 |
19K23125
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
植田 暁 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター グローバル研究グループ, 研究員 (30848859)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | カザフスタン / ウズベキスタン / ソ連 / 農業 / 飢饉 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ソ連農業の特徴であり、ポストソ連各国の農業にも重大な影響を及ぼし続けている農業集団化に関して、その成立過程を定量的且つ客観的に再評価することにある。対象地域としては集団化に伴う飢饉で最大の被害を受けたカザフスタンを中心に、比較対象として集団化による綿花栽培発展の成功例とされるウズベキスタンを取り上げる。 上記の目的に沿う研究成果として、2021年4月にJournal of Asian Network for GIS-based Historical Studies誌に英語論文"Demography in the Cotton-Producing Area of Kazakhstan Amid the Great Famine" が掲載された。同論文は、カザフスタン内の綿花栽培地域とウズベキスタン内の綿花栽培地域を比較し、両地域の人口動態をGIS(地理情報システム)を利用して分析した。その結果、先行研究で提示されていたカザフスタンとその他の中央アジア4カ国の状況には差があり、その差はソ連経済政策上の地域区分にあったという仮説を検証し、その仮説に妥当性があると評価した。 また、中央アジア経済史研究においてGISなど空間的手法を利用することに関して、有力な英語誌であるCentral Asian Surveyの紙上ラウンドテーブルに参加し、内容が2021年9月に、"Roundtable studying the Anthropocene in Central Asia: the challenge of sources and scales in human environment relations"として出版された。本紙上ラウンドテーブルは、人類学や環境学など他分野の専門家とともに「人新生の中央アジア」をキーワードに中央アジア地域研究に用いる資料とスケールに関して、議論を行ったものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿った学術論文が出版され、関連の文章も英文有力紙に掲載されたということで、研究計画はおおむね順調に進展している。 一方で、2021年度も新型コロナウイルス流行の長期化によって海外現地調査が不可能であった。そのため、上記成果を上げるために、刊行史料の追加収集とデータ構築の委託等を進めながら研究を推進した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はオンライン等での情報収集の強化と収集済みのデータの整理・系統化によって、本課題の目的に沿う事例研究および関連実績の成果公表を行った。一方で、当初計画していた旧ソ連公文書館における一次史料の精査という作業は、新型コロナウイルス流行の長期化のために行えなかった。 研究成果の取りまとめとともに、研究課題をより深化させる可能性が見いだせたことから、2022年度も研究課題を続行することとした。研究を取り巻く外部環境としては、海外調査再開の環境が整ってきたと考えられる。2022年度は海外における史料収集の可能性を様々な面で探りながら、オンラインおよびデータ構築面での国内作業を継続する。 ロシア・ウクライナ戦争およびロシア連邦への制裁等の影響で、ロシア連邦における実地調査には困難が生じることも想定せねばならないが、現時点では中央アジア諸国への影響は限定的なものである。現時点では、本研究課題に関する海外調査研究に関して、コロナ禍ほど全面的な困難となる可能性は低いと判断している。 成果公表に関しては、各国で整備が進んでいるオンラインプラットフォームの活用などを含めて広い可能性を探ることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行の長期化によって海外現地調査が不可能な状況が続いたことを主たる要因として、研究実施方法およびその実施スケジュールを再調整する必要が生じたためである。
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