研究課題/領域番号 |
19K23125
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
植田 暁 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター グローバル研究グループ, 研究員 (30848859)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 中央アジア / 人口統計 / ソ連 |
研究実績の概要 |
前年に引き続き、国内所蔵およびオンラインインフラの活用によって入手可能な史料を収集・整理・分析する作業を続行し、国内外への研究成果の発信を行った。 史資料の収集に関しては、まず、前年までのコロナ禍によって実施困難であった研究対象地域での調査が実現した。ウズベキスタンおよびカザフスタンにおいて研究機関および個々の研究者との学術交流を実施した。特にウズベキスタンにおいては、首都タシケントおよびジザフ市の図書館・大学・研究所等における史料調査および統計局・地図局訪問による最新の統計出版物および最新の地図多数を収集した。これらの史資料は本研究課題における地理情報システムGISを用いた分析を精緻化するにあたって有益であった。また、ウズベキスタン科学アカデミー歴史学研究所およびウズベキスタン国立大学、ジザフ教育大学等に所属する歴史研究者と本研究課題に関する意見交換を実施した。 研究成果の発信に関しては、英国を拠点とする英語圏のオンライン学術コミュニティーPeripheral Histories へ本研究課題に関わる論考を投稿し、査読を経て掲載された。本論考は、歴史地理情報学の方法論に焦点を当てたものであり、同コニュニティーのシリーズ企画「Diversity, ethnicity, and mobility in modern Central Asia」を構成する7つのポストの第一弾として、定量的な空間分析を用いることで、中央アジアのエスニシティや人口動態に関してどのような新たな知見を得ることができるのかを、具体的な事例を通じて提示したものである。また、中央アジアの人口とエスニシティに関する定量的な分析について、昨年度末に実施した報告の内容要旨が学会誌に掲載された。その他、本研究課題と深く関わる内容の事典項目執筆などを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の3年間に先送りとなっていた現地での史資料収集および対面での学術交流が実施できたことは極めて有益であり、研究内容の精緻化に大いに役立った。オンラインでの国際的な学術ネットワークの活用を進めたことで、成果発信に関しても新たな分野を開拓できたと考える。 一方、本研究課題は当初ロシア、特に国立経済公文書館RGAEなどに所蔵されている旧ソ連統計資料の活用を想定していたが、その実施は困難となっている。研究代表者は既にRGAEでの調査経験があるが、当該機関に所蔵される関連資料は膨大であり未だそのごく一部を確認できたにすぎなかった。しかしながら、コロナ禍の終息と交代でロシア軍によるウクライナ侵攻が勃発し、1年余りを経ても収束の見通しすら見えない。当面、ロシア連邦における史料調査は困難であると判断し、海外史料調査およびフィールド調査の重点を中央アジア各国に置くことで、外部状況の変化に対応した。
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今後の研究の推進方策 |
中央アジア、特にウズベキスタンにおける研究環境は急速に改善されており、今後の史資料調査および各種のフィールド調査が可能と考えられる。コロナ禍で抑制されてきた、中央アジア現地における諸調査をより積極的に実施し、研究内容の深化に努める。 理想的には、ロシア連邦国立経済公文書館RGAEなどにおける旧ソ連統計資料の原本調査が望まれるが、ロシア軍によるウクライナ侵攻が長期化し、日本を含む西側諸国とロシア連邦との関係が悪化する現下の情勢では、研究機関に所属する研究者がロシア領内で学術調査を安全に実施することは困難であると判断する。代替として、中央アジア各国での積極的な史料調査およびフィールド調査の実施を通じて、本研究課題の遂行に努める。 もっとも、2022年は年初のカザフスタン都市部での暴動、ウズベキスタンのカラカルパクスタンでの騒動などが発生し、中央アジア各国の情勢にも注視は必要である。現状では情勢は安定し、調査の実施が可能であることが見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として、ロシアのウクライナ侵攻後の情勢によって、ロシア国立経済公文書館等の在ロシアの史料所蔵機関における調査が実施できなくなったため。 次年度以降、主にウズベキスタンなど中央アジア諸国での資料調査及びフィールド調査実施に充てる予定である。
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