研究課題/領域番号 |
19K23129
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊東 さなえ 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員准教授 (20849608)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 災害 / 地震 / ネパール / 草の根ネットワーク / 災害復興 / 文化人類学 / 南アジア地域研究 / ネワール |
研究実績の概要 |
本年度は、本来であれば最終年度になるはずであったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により現地調査を一度も行うことができず、研究に遅滞が生じたため、研究期間を一年間延長した。 計画では、草の根ネットワークについて現地調査を行うはずであったが、実施できなかったため、代替としてオンライン上で調査地の人々とコミュニケーションするとともに、情報収集を行った。その中で、新型コロナウイルス感染症という新たな災害の中で、本研究が対象とする草の根ネットワークが物資の分配や情報の伝達などの機能を果たしていたことが明らかになった。加えて、新型コロナウイルス感染症をきっかけとして以前にも増して草の根ネットワークによるインターネット上での活動が増加していることも確認できた。新生地方自治体に関しては、聞き取りの中から、徐々にその存在感を弱めつつあるのではないか、その中で草の根ネットワークが再び存在感を増しつつあるのではないか、という示唆が得られた。 これまでの研究成果は2020年12月にネパール研究の世界的な学術誌であるStudies in Nepali History and Societyに掲載された。また、2020年7月にヒマーラヤ研究の国際学会であるSocial Science Baha Conference、9月には文化人類学次世代育成セミナーで口頭発表を行った。2020年9月には、インドのNorth Bengal UniversityのCenter for Himalayan Studiesの金曜研究集会にて招待講演を行った。なお、これらは全て、オンラインでの発表であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、予定していた現地調査を行うことができなかったことから、研究に遅滞が生じた。ただし、オンラインを利用し、情報収集を継続することで、遅滞を最小限に抑えた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響は当面続くものと考えられるため、現地調査を行うという計画は維持しつつも、オンラインでのインタビューや現地協力者とのコミュニケーションに基づく調査を先行して行う。 具体的には、年度前半のうちに現地の協力者に依頼し、行政資料の収集を行うほか、各関係者に電話やインターネットの会議システムを用いたインタビューを実施する。また、オンライン上でのニュースやソーシャル・ネットワーキング・サービス上での発言の収集を継続する。現地調査が可能な情勢になった場合にも、長期の調査は困難であると考えられるため、調査村での参与観察を優先的に行うものとし、それ以外の調査についてはできる限り事前にオンラインで行うものとする。 アウトプットについて、論文執筆に引き続き注力しつつ、学会発表等も積極的に行う。また、本年度より組織したヒマーラヤ若手研究者の研究会についてオンラインも活用しつつ活動を継続し、お互いの知見を共有しあうことでヒマーラヤ研究全体の推進を図るとともに本研究へのフィードバックを図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたフィールド調査が新型コロナウイルス感染症の影響により実施できなかったことで次年度使用額が生じた。 これらの費用については、新型コロナウイルス感染症による国内外の移動制限が解除された際に同内容の調査のために使用することを想定しているが、移動制限が解除されたとしても、当初予定と同等の現地調査を年度内に行うことは困難であると考えられるため、一部を調査員を雇用しての遠隔での現地調査の実施にかかる費用、資料の購入費用、英語論文の校閲費用等に使用したい。
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