研究課題/領域番号 |
19K23129
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊東 さなえ 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 学術振興会特別研究員(RPD) (20849608)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | ネパール / 南アジア地域研究 / 文化人類学 / 災害 / 復興 / 地震 / 草の根ネットワーク |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の影響により研究期間を一年延長したが、本年度も状況は改善せず、研究活動を思うように進めることができなかった。そのため、研究期間をもう一年延長することとした。 年度初めの計画では、草の根ネットワークについて現地調査を行うはずであったが実施できなかった。また、現地の調査員の雇用による訪問調査も企画したが、現地の感染拡大も続いていたため、実施も見合わせた。代替として、オンラインでグループインタビューを実施した。また、現地の新聞記事やSNS上での情報収集を実施した。国内外で出版された研究についても収集を行った。その結果、歴史的モニュメントの再建が進む中で、地方自治体や住民組織と国家や国際協力期間との間での「伝統」をめぐる交渉が活発化していることがわかった。特にカトマンドゥ盆地内のネワールが多く住む地域では、寺院の再建を「ネワール的」に行うことが打ち出され、実際に再建が進展してきている。一方で、2021年4月には、震災で倒壊し、その後、震災の象徴となっていた首都中心部のダラハラ塔の再建が達成された。その落成式には首相や復興庁の幹部らが出席し、復興の進展をアピールする場となった。このように、ネパール国としての復興とネワールの復興、さらには個別の村や都市の復興などをめぐる言説の絡み合いと相剋は復興活動が進展する中でも広く見られる、ということがわかった。 これまでの研究成果については、2021年10月に、南アジア地域研究の国際学会である49th Annual Conference on South Asiaにてオンラインで発表した。また、2021年11月には、ネパールの独立系研究期間であるマーティン・チョウタリ研究所のウェビナーシリーズにて招待講演を行なった。加えて、『KINDASグループ2最終成果報告集』に所収の論文として取りまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、予定していた現地調査を行うことができなかったことから、研究に遅滞が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナウイルス感染症の世界的流行に伴う渡航規制の緩和が徐々に行われており、感染が落ち着いている時期であれば渡航できる可能性が高まったため、今年度は感染状況に配慮し、柔軟に対応できる体制を維持しつつも、現地調査を実施する予定である。具体的には、夏季および冬季に二度、それぞれ二、三週間程度、感染状況が落ち着いているタイミングを見計らってネパールに渡航し、現地調査を行う。その際は、オンラインでの調査が難しかった村落部での調査を優先的に行う。また、2021年4月に再建されたダラハラ塔をはじめとする復興された歴史的モニュメントも実際に訪問する。 オンラインでの調査も継続する。地方自治体や若者へのインタビューについては、オンライン会議システムを活用して行う。また、オンライン上での情報収集も継続する。 アウトプットについては、論文の執筆・投稿を行う。特に英語での論文執筆を行いたい。加えて、学会発表等も積極的に行う。特に、国際学会について、対面での開催を検討しているものが今年度は多くあるため、できるだけ対面で参加し、この2年間難しかった人的ネットワークの拡充を図りたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、現地調査が実施できなかったこと、学会や研究会がオンラインになったことから、次年度使用額が生じた。また、当初は現地で調査員を雇用しての訪問調査を計画していたが、現地でもコロナウイルス感染症の影響が続いており、訪問調査が実施できなかった。 本年度は移動制限の緩和が見込まれることから、現地調査の実施および対面での国際学会への参加などを行う予定であり、繰り越した予算は主として旅費として使用する予定である。
|