研究課題/領域番号 |
19K23130
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
小林 基 摂南大学, 外国語学部, 講師 (10845241)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 農業 / イノベーション / 稲作 / 機械化 / 品種 / 岡山市 |
研究実績の概要 |
研究課題の2年目となる2020年度は、研究対象とする諸県において、前年に遂行しきれなかった現地調査を行いつつ、育種・普及関係者および農家への聞き取りを行う予定であった。しかしながら、COVID-19の流行が本格化する中で、特に報告者が拠点とする大阪では外出自粛が要請される中、調査を行うことが困難となり、予想外の進捗の遅れが生じている状況である。 限られた機会を有効に利用するべく、2020年度は比較的近い県である岡山市に集中して調査を行った。岡山市ではの米の地方品種である「朝日」と「アケボノ」を多く作付している。国内の他の品種がより栽培の容易なコシヒカリ系品種に取って代わられる中で、これらの古い品種が存続している背景として、市内の干拓地農業における高度な生産能力が重要であることが指摘できる。具体的には、整形された農地、機械化先進地域であること、生産能力の高い農家への農地集約化などである。さらに近年では、独特の食味を持つこれらの品種が希少となり、業務米等の需要が開拓された。ただし、これらの事柄については、とくに農協や農政担当者、農家への聞き取り等によって裏付けを行う余地が残されている。 また、岡山県は全国有数の農業機械産業の集積地でもあり、これら企業の集積のメリットが農業のスマート化などあらたな農業イノベーションの推進に寄与している可能性もある。こうした点も旧品種存続のファクターとして重要となるかもしれず、本研究課題の視点を発展させる材料として検討する価値があると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
岡山市での調査は、市内の旧品種の存続要因について従来知られていなかったことを明らかにするための材料がそろい始めた点で、ある程度の進捗が認められたといえる。また、農業機械化については、本課題をさらに発展させる可能性のあるファクターとして注目される。 しかし、昨年度はCOVID-19の本格的な流行が生じ、特に報告者が拠点とする大阪府内では断続的に外出が制限されることとなった。これにともない、業務出張を長期にわたり自粛せざるを得ず、資料収集と現地での聞き取りをほとんど断念せざるを得なくなった。また、授業のオンライン化対応および報告者の所属先変更に伴って業務多忙となったことも、本研究課題を推進するための時間が著しく削がれる要因となった。 結果として、農家や農協など生産現場での聞き取りはほとんど遂行できなかったうえ、図書館等での資料調査も、未だ最低限の資料収集しか終えられていない状況である。このため、計画全体の25%程度しか調査が遂行できておらず、計画の大幅な遅れが生じている。研究成果を公開するにも材料が不足しており、今年度業績として発表できることがほとんどなかったといえる。 このため、本課題の計画を一年間延長し、遂行しきれなかった部分を次年度に持ち越して行うこととなった。次年度のCOVID-19の流行がどのように変動するかは不確定であるが、計画の見直しが必要となっている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
次の2021年度は本課題の最終年次であるため、本来ならば成果公表のための準備に入るべきであるが、一通りの調査も終えられておらず、そればかりかCOVID-19流行のさらなる持続も予想される。このため、計画を見直しつつ、難しい状況下でも最大限の成果を得られるように努めたい。 まず、四つの県の比較を行うのではなく、近県である岡山県における米の旧品種存続の条件について集中的に明らかにし、これについて成果を公開することに努めたい。岡山県は大阪から比較的近く、日帰りでの調査も可能であり、断続的な外出規制の合間に出張に赴くことも比較的容易であることが想定できる。他県についての調査は、岡山県での研究が単なる一ケースの報告に留まらないよう、その位置づけを明確化する材料を得るために補助的に行うことにしたい。 その代わりに、当初の計画の単なる縮小となることを避けるよう努める。過去の計画では調査すべきイノベーションの内容として育種のみを検討していたが、機械化や農地流動化、市場形成といったファクターについても注目し、米品種存続を支えるイノベーションの体系について総合的に解明することを目指したい。そのためには、文献資料のさらなる収集と、現場の組織・人々(行政、農協、農家、企業等)への聞き取りを行ってゆく必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
先述の通り、パンデミックおよび業務多忙の理由によって今年度に調査がほとんど行えず、計画が大幅に遅れている。このため、成果公表もできておらず、予算も使用できていない状況となっている。 次年度においては、特に岡山市内等を中心として資料収集と聞き取りを行いたいと考えており、そのための旅費に60%程度の費用を使用することとなる。日帰りの出張が多くなり、出張回数が多くなるために、旅費が膨らんでしまうことが想定される。 残額については、論文投稿にかかる校閲と投稿料に30%、書籍や文献複写料金、文具等に10%程度の支出を検討している。
|