研究課題/領域番号 |
19K23132
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
諸 昭喜 奈良女子大学, アジア・ジェンダー文化学研究センター, 協力研究員 (80848359)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 民俗病いの変化 / 韓国 / 台湾 / 漢方医学 / 病いの構築 / 産後風 / 月内風 |
研究実績の概要 |
2019年度は、韓国と台湾を対象として、地域選定及び予備調査、資料調査を行った。 具体的には、伝統医学の病いがバイオメディカルなパラダイムとの競合関係の中でどのように変化するかを分析することを目的として、両国の歴史、近代化と都市化、医療システム、グローバル化における漢方の立場、家族構成、人口政策や少子化への対策、出産と産後ケアの状態などの基本情報について文献調査を実施した。韓国での調査に関しては、奈良女子大学の倫理審査を受審し、承認後にインタビュー依頼を開始し、2019年8月から12月の間に3回の予備調査を行った。これまでの高齢者に対する調査と比較するため、若い世代とその治療者に対する調査を主に行い、調査結果については韓国で研究会で2回発表した。この内容は韓国医療人類学研究会の編集の本で来年出版される予定である。台湾については、東洋医学に起源をもつ台湾の「風湿」又は「月内風」との比較研究の初段階として、今年度は主に文献調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備調査と研究会での発表の結果、次年度以降に本格的に着手していくための方向性を確認した。西洋医学のパラダイムにおいては、民俗病の病名は失われる傾向があり、「○○症、〇〇症候群」という症状で呼ばれる傾向が強まっている、それは漢方の言説変化と関係があるという有意味な点が見られた。そして、比較的若い世代の女性の間では、最近子どもを産んでまもなく現れる「症状」に対して解釈ができない状態になっていることが見られた。この点に関して本調査ではもっと詳しく調査する計画を立て、現地調査に向けて準備と交渉を完了していたが、新型コロナウイルスの発生のため、調査を遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
韓国の調査については、予備調査のインタビュー対象者にオンラインで追加のインタビューを行う予定である。また、漢方産婦人科専門医院において治療法、患者の特性を継続して調査し、若い世代の患者に対してインタビューを実施する。台湾の場合、産後養生の理論と養生施設の設置、養生食の基礎を作った人物に関する文献調査を行う。そして、現地の研究補助員と漢方産婦人科専門医院の専門家、産後のケアの専門家、実際の患者や、女性を対象として、1次はアンケート調査を実施し、2次はオンラインでのインタビューを行う計画している。9月の台湾人類学会での発表を含め、査読付きの学術雑誌に成果を論文として投稿する。また、内容を発展させ、新たに得られた知見を活かしながら、学術図書の刊行を計画している。
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