研究課題/領域番号 |
19K23139
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研究機関 | 国際ファッション専門職大学 |
研究代表者 |
磯部 美里 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 准教授 (90738072)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 民族医学 / 女性 / タイ医学 / 医療人類学 / 中国 / 少数民族 / タイ族 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国の西双版納タイ族自治州に居住するタイ族のタイ医学を事例とし、文献資料や当地での聞き取り調査を通して、先行研究ではあまり注目されてこなかった当地にみられる女性たちの治療実践について、医療人類学の視点から明らかにすることを目的とするものである。そのためには、まず中国のタイ医学における医学理論や治療方法を整理し、実際にタイ族の人びとがどのようにタイ医学を利用しているのかといった当地におけるタイ医学の治療実践についても見ていく必要がある。 そこで、2021年度においては次のような研究活動を行った。第一に、関連文献資料の収集と整理である。中国の医療人類学の関連文献を分析し、中国における医療人類学および民族医学研究の傾向や特徴、課題についてまとめ、研究会で報告した。それにより、中国における民族医学研究が基本的に少数民族医学を指すこと、そのなかでも女性の治療実践に目を向けた研究は少ないことなどが明らかとなった。第二に、中国の「タイ医学」理論や治療方法に関する文献の整理、翻訳作業を行った。中国の「タイ医学」についてまとめた日本語文献は管見の限りないため、日本語で読める「タイ医学」の概説文の公開を目指し、現在、準備を進めている。第三に、当地のタイ医学に関わる人びと、例えば民族医や診療所を手伝う人びと、タイ医学を利用する患者の役割や関係性、利用目的などを考察した論文を執筆した。当該論文では中国の漢族と少数民族における力関係が必ずしも当地の少数民族医学である「タイ医学」とその他の医学(例えば近代医学や中医学)との関係に当てはまらないこと、当地の人びとはさまざまな事情や理由で横断的、重層的に複数の医療体系を利用していることを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度提出した実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」では、2021年度の研究計画として、第一に現地調査、第二に論文執筆、第三に「タイ医学」に関する翻訳作業および概説文の発表という3点を掲げた。しかし、COVID-19の影響で海外渡航が難しく、2021年度に2度予定していた中国雲南省西双版納タイ族自治州などでの調査を行うことができなかった。本研究は現地調査が肝となるため、現地調査ができていないという進捗状況に対して「遅れている」という自己評価をつけた。 その他の進捗状況は以下の通りである。 上記に挙げた論文執筆について言えば、2021年度中にタイ医学における女性の治療実践について追加調査を行い、「タイ族女性は家族の身体管理を担うものとして「タイ医学」の治療実践に携わっているのではないか」という本研究の仮説を実証するための論文を完成させる予定であった。しかしながら、追加調査が終わっていないため、現在はこれまでの調査結果に基づき論文を執筆中である。他方、2020年度の調査結果をまとめた当地の多元的医療体系関して執筆した論文(前項で触れたもの)を学会誌に投稿中であり、現在、査読結果を待っている。「タイ医学」の概説文はブックレットとして発表することを考えており、現在、翻訳、執筆作業を進めている。 以上をまとめれば、現地調査の実施という点では当初の予定より研究が遅れているものの、そのほかの研究活動についてはおおむね計画通りであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、三つの課題に分けて研究活動を進めたいと考えている。第一に現地調査、第二に論文や研究ノートの執筆、第三に「タイ医学」に関するブックレットの刊行である。 昨年度の報告書でも記したように、COVID-19の影響により、中国での現地調査が現段階では難しい状況にあるため、「タイ医学」(民族医学)と女性の治療実践というテーマをもとに、 同系民族が暮らす近隣国での現地調査の実施を視野に入れている。現地調査では「タイ医学」(民族医学)の診療所において参与観察や聞き取り調査を行い、そこで女性が果たす役割や患者との関係性について明らかにする。さらに、家庭内において日常的にどのような治療実践が行われているのかという点に着目し、それが傷病人や高齢者のケアといかなる関わりを持っているのかという点についても調査を進める予定でいる。調査結果をもとに、「タイ族女性は家族の身体管理を担うものとして「タイ医学」の治療実践に携わっているのではないか」という本研究の仮説を実証するための論文を執筆し、それを学会誌あるいは学術誌に投稿する。また、2021年度に行った中国における医療人類学のレビュー報告を練りなおし、論文あるいは研究ノートとして発表することも計画している。 ブックレットに関していえば、現在、書き進めている原稿を完成させた後、校正作業を進めながら、印刷会社を決定し、2022年度中に完成させ、刊行する。2022年度は最終年度となるため、当初計画した研究内容の遂行を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で渡航が困難となり、2021年8月、2022年3月、に予定していた中国での現地調査や資料収集ができなかったため、その分の予算が余り、次年度使用額が生じた。これらについては、今年度(2022年度)の調査で使用する予定である。今年度は近隣国での調査も視野に入れ、現地調査を実施できるよう準備や調整を進めたい。
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