研究課題/領域番号 |
19K23140
|
研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
長島 雄毅 愛知工業大学, 工学部, ポストドクトラル研究員 (80840157)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 幕末 / 丹波 / 馬路村 / 宗門改帳 / 人口移動 / 婚姻移動 |
研究実績の概要 |
本研究は、幕末の大都市と周辺地域間の人口移動、なかでも婚姻移動について、その背景にある社会・経済・環境などの点から解明することを目的としている。その際、周辺地域側の観点を重視しながら、大都市の社会に対する影響についても新たな知見をもたらすことを目指す。 2019年度は、本研究で使用する古文書史料を所蔵する亀岡市馬路町自治会を複数回訪問して調査・収集を実施した。具体的には、幕末の丹波国桑田郡馬路村の「宗門改帳」と「反別帳」を現地で閲覧したうえでデジタルカメラによって撮影し、記載内容の整理を進めた。 このうち「宗門改帳」については、従前よりExcelにて整理を進めていたものに新規収集分の内容を付け加えるかたちで整理を完了した。これによって、1830年代半ばから四半世紀分の人口や村内住民の出生・死亡・転出入などのライフイベントを把握することが可能となった。次に、「反別帳」についてもデジタルカメラによる撮影を完了した。しかし、記載内容を詳細に検討する過程で欠落箇所があることが判明したため、当該史料による住民の経済的背景の把握が困難となった。一方で、古文書史料群を閲覧するなかで、「定米帳」という史料によって「反別帳」の欠点を一定程度は補完しうることが明らかになったことからデジタルカメラによる撮影を行った。時間的制約から、「定米帳」のすべての年次分を撮影するには至っていないが、ひとまず「反別帳」と「定米帳」を組み合わせて対応し、内容の整理を進めた。これによって、婚姻移動の実態について経済的背景をふまえながら分析することが可能となった。 これらのデータによる分析結果については2020年3月に日本人口学会関西地域部会にて報告を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大によって延期となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、アルバイトを雇用して史料の撮影を依頼する予定であったが、所属大学の規定により実質的に困難であることが判明した。そのため、研究代表者自身で史料撮影すべてを実施したため、多くの時間を割くこととなったことが挙げられる。また、2020年度から他大学への転任が決定したことによる準備・調整等に時間を要したことも進捗に影響を与えた。そのほか、新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年3月中旬に予定されていた研究報告(口頭発表)が延期となり、当初計画していた時期に成果を公表することができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初は2020年3月に発表予定であった内容(馬路村における婚姻移動の実態とその背景に関する研究)をより洗練させて、2020年秋の日本地理学会か人文地理学会で公表(口頭発表)する。その後、論文を執筆して、年度内の投稿を目指すこととする。これと同時に、当初の研究計画に基づいて、桑田郡内他村(馬路村近隣)の宗門改帳などの史料の収集を進めて、整理・分析を行う。こちらの分析結果については2021年3月の日本地理学会での発表し、その後、論文として投稿することを目指す。 以上の研究を進めるにあたって、2020年度から他大学へ転任したことにより、当初計画よりも1回あたりの調査費用(旅費)が大幅に増加することとなる。前年度のように、調査地において大量の史料を撮影する作業がより困難となるが、臨機応変に対応をしながら研究を進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画ではアルバイトを雇用して古文書史料の撮影を実施する予定であったが、所属大学の規定上、困難であることが判明した。そのため、アルバイトの人件費が発生しなかったほか、撮影用のデジタルカメラの購入が不要となったことで物品費の額が圧縮された。また、2020年3月に予定していた研究発表が延期となったため、旅費の支出が少なくなった。以上から、11万円あまりの次年度使用額が生じた。 次年度(2020年度)は研究代表者自身が転任することによって、新たに研究用のPCが必要となることから、繰り越し分をその購入費用に充てる。また、所属大学と研究対象地との距離が大きくなり、調査費用の大幅な増加が確実であることから、人件費に予定していた金額についても、必要に応じて旅費に充当するなどの対応をとる。物品費として予定していた額については、地域史関係の書籍の購入に充てることを計画している。
|