2020年度は(1)丹波国桑田郡馬路村(現京都府亀岡市馬路町)における婚姻移動の分析、そして比較対象として(2)同国船井郡西田村(現京都府南丹市八木町西田)の史料の収集・整理と分析、さらに(3)人口移動に関する議論の再検討、の3点を行った。 (1)は前年度から継続して整理を進めてきた馬路村の史資料によって、京都との間での婚姻移動の特徴について分析を進めた。その結果、転出と転入で年齢等に大きな差異がみられること、生家の社会・経済階層が転出先の相違をもたらすことなどが明らかになった。これらの成果の一部は日本人口学会関西地域部会研究会において報告した。現時点で論文としての公表には至っていないが、精緻化のうえで学術雑誌への投稿を行っていきたい。 (2)は、当初、京都府亀岡市内の自治会等を訪問して史資料を収集することを計画していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって困難となったことから、京都府立京都学・歴彩館所蔵の西田村文書を利用することとして、史料の記載内容の整理と分析を行った。その結果、馬路村の事例と同様、京都との婚姻移動において転出入で年齢の相違が摘出された。この成果は、出張制限等によって所蔵機関への訪問が大幅に繰り下げとなったこと、複写物の受領に時間を要したことなどから、研究助成期間中の公表には至らなかった。 (3)は、上記(2)の調査延期中、本研究の位置づけを補強する目的で議論の再検討を行い、結果を論文として公表した(立命館文学672号)。 以上の研究を通じて、大都市と周辺地域の間での婚姻移動には、移動方向によって移動者の属性に相違がみられた。このことは大都市と周辺地域の関係性を考察するうえで重要な示唆を与える。今後も詳細な分析を継続して進めていきたい。
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