研究課題/領域番号 |
19K23141
|
研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
近藤 有希子 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 助教 (10847148)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 国家の歴史 / 体験 / 記憶 / 虐殺 / ルワンダ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現代ルワンダにおいて、紛争と虐殺に関わる個別の特異な体験とその記憶が、親密な他者とのあいだに分有され、さらにそれが若い世代の者たちに継承されていく姿を民族誌的な記述を重ねるなかで検討することである。 令和元年度には、当初、2020年3月9日~27日の期間でルワンダに渡航する予定であったが、新型コロナウィルスによるルワンダの国境封鎖に伴って、急遽、滞在期間を変更して、3月21日に帰国した。本渡航では、本研究課題の調査項目である「大人世代の個別の記憶」「若者世代の『体験』の継承」に関する現地調査に従事することをおもな目的としていたが、ルワンダ到着後すぐに現地での一人目の感染者が確認されたことに伴って、今回は調査村への訪問を断念した。首都キガリにおける滞在中には、状況が深刻化する前に、一度だけキガリ市内の虐殺記念館を見学した。しかしすでにアジア系への偏見が時折見受けられたため、自他の安全を優先して、長年の付き合いである調査協力者への挨拶以外は、基本的には滞在先で資料や文献を読み込むことに専念した。 研究成果の公開としては、2019年11月の国際シンポジウム「共有できない平和/争いが移動する」に招待され、昨年度までの調査内容について口頭発表をおこなった。その内容をまとめたものを、立命館大学の紀要『生存学研究』に掲載予定である。また、『アフリカで学ぶ文化人類学』(昭和堂)のなかで、これまでの現地調査から得られた知見の一部をエッセイとして寄せた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ルワンダにおける現地調査が、新型コロナウィルスの影響で予定通りに遂行できなかったことが第一の理由としてあげられる。ただし、このような状況は今後も長期的に続くことを鑑みて、これまでの調査資料を丹念に見直し、さらには日本国内でも実施できる調査項目を洗い出しながら、令和2年度以降もひきつづき当該の研究課題に取り組んでいきたいと考えている。 研究成果の公開に関しては、国際シンポジウムでの口頭発表において、文学や歴史学、国際関係学などさまざまな分野の研究者から多様な意見をいただき、代えがたい時間を過ごすことができた。また、書籍のなかで掲載したエッセイによって、アカデミアに限らない一般の読者から感想を寄せてもらうこともあり、短文ながら非常に重要な成果であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、いつ、どのように現地調査に従事することができるのかが不透明であるため、まずは前年度までに収集した調査資料を見直し、あらためて整理と分析をおこなうなかで、研究成果の公表を進めることに注力する。2021年1月に発表が決定している欧州での国際会議については、国内外の状況を鑑みながら参加の可否を検討する。インターネット環境にあるルワンダ人の調査協力者には、必要に応じて、メールやSNSなどを通して補足の聞き取り調査を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度には、当初の予定よりも渡航期間が短くなったこと、それに伴い計画していた口頭発表をおこなわなかったことも理由としてあげられる。令和2年度には、2021年に欧州の国際会議での口頭発表が決定している。また状況を鑑みながらではあるが、2021年2~3月に現地調査に従事できればと考えている。それらを旅費として支出する。ただし、それも難しい場合には、これまでの調査資料をもとにした成果公表に一層の重きをおき、とくに英語での論文の執筆をおこなうために、その他(英文校閲費)に支出の多くを充てることを計画している。
|