研究課題/領域番号 |
19K23160
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
平井 光貴 立教大学, 法学部, 助教 (20850233)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 法哲学 / 法概念論 / メタ法理論 / 概念工学 / 法の支配 / 裁定理論 / 規範的法実証主義 / ロナルド・ドゥウォーキン |
研究実績の概要 |
2021年度は、研究実施計画において掲げた三つの目標、すなわち、法という統治形式に関する記述的問いへの一定の応答、法という統治形式の機能とあるべき態様に関する規範的問いへの一定の応答、そして、この二つを架橋するメタ理論的問題への一定の応答をまとめて一つの論文とする作業(主に文献渉猟及び論文執筆)を行った。この論文は東京大学大学院法学政治学研究科に博士学位論文として提出された(2022年3月学位取得済み)が、その内容の一部は、本研究の具体的成果物として、2021年度日本法哲学会学術大会分科会報告の形で公表された。(また、残余部分はのちに書籍の形で公表予定である。) 上述の成果の具体的内容のうち、本年度に特有の部分は以下の通りである:前年度までのメタ理論的問題への概念工学からの応答に従い、法という統治形式に関する記述的問いは、一定程度概念工学を前提とされざるを得ず、それを前提としたうえで、法という統治形式のうちでも裁定にあたる部分において、裁判官が道徳的判断に基づいて解釈を行うこと(これは、前年度までの研究成果である法概念の概念工学に依拠するものとなる)の規範的な是非を、法という統治形式の機能とあるべき態様といった見地から検討した。結論としては、法という統治形式が内包する一連の機能のうち、民主的立法府の優越が基本的には(民主的統制や一般的ルールの統治から得られる諸々の便益の観点から)承認されるが、非民主的司法府特有の機能として、事件の遡及的解決というものがあり、この点で、立法府が未来の事象に対して展望的・一般的ルール制定の仕方で指令を与えるのに対して一定程度認識的に優位な立場にあるため、その限りにおいて民主的立法府の優越の例外として、裁判官の道徳的判断に基づいた解釈は望ましいということが論じられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況として、研究論文2本、学会報告1件が成果物として公表された。昨年度は、引き続きコロナウィルス禍というイレギュラーな要因により、主に図書館利用等文献渉猟・資料収集活動に制約が生じ、執筆済み論文の一部の公表が遅れた。(そのため、再び補助事業期間延長申請を行っている。)
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、博士論文としては執筆・受理済みであるが未公表部分である「法という統治形式」に関する一階の議論を、部分的に論文公刊や研究会・学会報告の形で公表することを予定している。 具体的には、現在所属している早稲田大学法学学術院並びに前任校立教大学法学部紀要や、法と哲学(雑誌)などへの論文投稿、並びに、東京法哲学研究会(国内研究会)や日本法哲学会学術大会分科会(国内学会)での報告などのいずれかの手段を通じての公表を考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度のコロナウィルス禍から生じた変則的状況により、引き続き次年度使用額が生じた。次年度においては、文献等研究に必要な物品の購入や、学会・研究会等の参加に伴う諸費用に充てる予定であるが、2022年度における学会・研究会等も目下引き続きオンラインでの実施となることが見込まれるため、かかる費用は引き続き追加的な文献等購入費に振り分けなおすことを予定している。
|