本研究は、非営利団体(社団ないし組合)を対象とし、ドイツ法上の理論展開を参考として、構成員が適正な情報の取得・共有に基づき団体運営に参与するための基礎的な権利を「情報(請求)権」と定義づけ、その権利保障が適正な団体運営に(どのように)役立ち得るか、および、団体的な拘束力の正当性を根拠づける諸要因・条件となりうるかについて、まずは端緒的な検討を行うことを目的とする。 本年度では(COVID-19の影響により一部の計画変更を余儀なくされた)昨年度の研究調査を進展させ、「情報(請求)権」の一種である、日本法およびドイツ法上の民法上の組合における組合員の「検査権」(Kontrollrecht)概念の規律内容とその意義に関する分析を行った。それにより、当該権利は、各組合員が組合員たる地位に基づき業務の決定・執行の監督をし、運営に関与(参与)をする局面において積極的な意義を有し、それゆえに全ての組合員に(強行法的に)最低限保障された権利であることを明らかとし、当該研究成果を年度中に公表した。また、公表に際しては、新たに複数の研究会に入会し、研究遂行に不可欠な進捗・成果報告の機会を複数確保した。加えて、2021年にはドイツにおいて人的会社法の大規模改正が行われ、上述の権利に関する規律内容にも変更が加えられたため、改正に関する資料を渉猟し、改正後の規律内容に関する分析を進めた。 ほかに、団体の運営に関与(参与)する権利保障の意義の考察に際し、本年度では、地域資源管理を担う団体活動の実態(実体)分析のため、隣接諸科学との学術交流・意見交換にも積極的に取り組んだ。その際には、林野庁や各種自治体の実務担当者との意見交流の機会を得ることができた。本年度では、財産管理型の団体運営の事例分析として、特に協同組合と入会団体(集団)における法制度上の課題を整理し、当該研究調査の成果の一部を公表した。
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