研究課題/領域番号 |
19K23171
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
庄司 貴由 三重大学, 教養教育院, 特任講師(教育担当) (80849042)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 政党 / 外務省 / PKO(国連平和維持活動) / 連立政権 / エルサルバドル / ソマリア |
研究実績の概要 |
2019年度は、三つの側面で研究を実施してきた。 第一に、史資料の渉猟である。情報公開請求などを通じ、日米の一次史料の取得に努めてきた。また、外務省外交史料館で特定歴史公文書等利用請求も実施し、多角的に歴史文書の発掘を進めている。この間、三重大学附属図書館などに所蔵されていない書籍、論文、回顧録、オーラル・ヒストリーなども幅広く揃えてきた。これらの作業によって、研究のための基盤がより整備されるに至った。 第二に、共編著の刊行である。取得した一次史料の精査を進めた結果、非自民連立政権の国連平和維持活動(PKO)参加問題は、多分に宮澤政権後期のそれに通ずるものがあった。なかでも、根拠法(国際平和協力法)の運用、推進主体の関与等については、むしろ相違点を見出す方が難しいほどである。それゆえ、宮澤政権期の動向も分析の射程に含め、細川連立政権下で唯一実現された国連エルサルバドル監視団(ONUSAL)参加を中心に検討を進めてきた。その際、これまで取得した未公刊文書と突き合わせ、より包括的な検討を試みている。この成果の一部、とりわけ宮澤政権期のものについては、5月に出版する共編著『元駐韓大使寺田輝介回顧録』のなかに収められる。 そして第三に、学術論文の刊行である。上記二つを進める間、論文「ソマリアPKO派遣構想の挫折」が、日本政治学会編『年報政治学』に掲載された。同論文は、カンボジアPKO参加に着目する先行研究と一線を画し、ポスト・カンボジアPKOをめぐる試行錯誤を軸に検討したものである。今後、ONUSALへの参加も含め、五五年体制崩壊後のPKO政策をさらに検討していくための布石として機能するだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに日米での情報公開請求を終え、一部ではあるものの、開示文書を取得済みである。それらの読み込み・分析を並行して進めながら、学術論文を作成し、一本が掲載に至っている。また、共編著の校正作業も終わり、出版も決定済みである。史料の渉猟、刊行状況に鑑み、「おおむね順調に進展している」と判断した。 ただし、昨年末からのコロナウィルス蔓延の影響もゼロではない。主な調査先である国立国会図書館、外務省外交史料館などが次々と閉館になってしまっている。それゆえ、さらなる史資料の調査は、一時中断を余儀なくされている。また、関係者へのインタビュー調査も延期となり、この点でも今後軌道修正が求められるだろう。 こうした不測の事態による影響が、「当初の計画以上に進展している」と判断しなかった所以でもある。
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今後の研究の推進方策 |
目下発令中の「緊急事態宣言」、ならびにコロナウイルスの状況に鑑み、次の三点を軸に今後の研究を推進する。 (1)日米両国の新開示文書の郵送を待っている間、現在入手済みの史資料を読み込み、どのような文書が必要なのかをさらに洗い出す。 (2)上記作業が概ね一段落した後、これまでの知見をまとめ、口頭発表の準備に移る。 (3)論文などの執筆にも、引き続き取り組んでいく。 (4)コロナウイルスをめぐる情勢が改善された後に、関係者へのインタビューをはじめ、フィールドワークも実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの状況に鑑み、出張を伴う学外での研究活動を自粛・延期した。そのため、おおむね3回分の出張経費が残されるに至った。その分を次年度の出張経費に繰り越すこととする。
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