本年度は、三つの方向から研究活動を進めてきた。 はじめに、単著の刊行である。2024年6月に、単著『日本のPKO政策―葛藤と苦悩の60年』(筑摩書房)を上梓することが決定している。作業は、すでに校正段階を迎えている。本書は国連加盟から南スーダンPKOまでの60年史を描き出す実証研究であり、今回の助成で得られた成果の多くは加筆・修正を施した後に、内容に組み込まれている。 次に、昨年度に積み残した国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)参加過程の実証研究である。これまで自衛隊のUNDOF参加は、村山富市率いる自社さ連立政権から始まったかのように解されてきた。ところが、情報公開請求で新たに取得した史料によると、村山政権誕生前からカナダ政府と接触し、進められてきたという新たな知見が得られた。こうした史実を踏まえ、既存の解釈に修正を加えるに至った。なお、この部分の成果、および内容については、既に述べた単著に収められている。 そして最後に、引き続き史資料の調査・分析を実施した。本務先の附属図書館に所蔵されていない書籍、学術論文、雑誌記事、回顧録などを、前年度以上に買い揃えることができた。同時に、すでに取得済みの情報公開請求開示文書、外務省外交史料館所蔵文書については、すべて再確認まで終わっている。したがって、研究のための基盤整備は、当初の計画以上に進展した。残る問題は、特定歴史公文書等利用請求による新史料の取得となる。この点は、さらに時間を要する状況下にあるため、今後の課題としたい。
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