研究課題/領域番号 |
19K23172
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 真理 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 研究員 (10848675)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 地域研究 / 現代イスラーム経済論 / インドネシア / ザカート制度化 / 東南アジア / マレーシア |
研究実績の概要 |
研究プロジェクト1年目である本年度は、下記の2点について研究を行った。 (1)マレーシアにおけるフィールドワーク 研究が調査対象としている2カ国のうち、本年度はマレーシアを訪れ、フィールドワークを行った。2019年10月に行ったフィールドワークでは、首都クアラルンプール、スランゴール州、サバ州の三か所のザカート管理団体を訪ね、ザカートの会計や州ごとの制度に関する詳しい聞き取り調査を実施した。また、マレーシア国際イスラーム大学(IIUM)などの複数の大学発行の専門書店、宗教省も訪ね、資料調査、聞き取り調査を行った。調査からは、マレーシアのザカート管理制度は州ごとに異なり、徴収・管理・分配を全て宗教省外郭団体が行っている地域もあれば、分配は地元のNGOと協力して行っているところもあり、かなり地域差があることが判明した。特に興味深い知見としては、同国のザカート管理の実践が個人の税金の控除だけでなく、企業にもPRというインセンティブを持たせて更なる徴収を加速させようとしている点が明らかになった。 (2)ザカート管理団体の最新動向についてのデータ収集、整理、研究成果発表 本研究が対象とする2カ国(インドネシア、マレーシア)のザカート管理団体の制度化の発展を理解するために、英語、インドネシア語、マレー語文献の収集を精力的に行った。研究成果の発表としては、国内で2つ、国外で6つの口頭学会発表を行い、一部を英語のブックレットという形で公開した。第一として、フィールド調査の事例分析を、2020年1月には、3人のイスラーム経済研究者をインドネシアから招聘し、「イスラームと新たな福祉パラダイムに関する国際ワークショップ」を行うことで、国際的な研究ネットワークの拡大を促進した。第二に、その理論的補助線として「イスラーム思想における福祉的概念」という主題について、第36回日本中東学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通りマレーシアでのフィールド調査を行うことができた。インドネシアでの調査は、昨今の情勢によって困難となったが、SNSやzoom会議などで状況を補足している。さらに、当初は予定していなかったが、シンガポールで1950-60年代に発行されたイスラーム雑誌「カラム」に関する研究も行った。マレー・イスラーム世界におけるザカートの歴史的変遷を理解するためにも、世界的なイスラーム復興以前の情報を得ることは重要である。当該雑誌の質問コーナーのザカートに関する項目を整理、考察し、ディスカッションペーパーとして出版された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、当初の計画通りインドネシアでのフィールドワークを踏まえた分析を行っていこうと考えるが、コロナ禍における渡航の是非についてはまだ不明である。よって、既に渉猟した文献の整理、論文執筆などに重点的に力を注ぐことにする。フィールド調査にしても、インフォーマントにオンラインで聞き取りを行うなどの対策を考えている。地域間比較を軸とした最終成果のまとめについても、次年度下半期から取り組むことにし、年度内あるいは2012年度上半期までの成果公表をめざすことにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、当初予定していた2.3月のインドネシア渡航が不可能になったため、人件費・謝金の全てと、旅費の一部が使用できなかった。今年度後期に長期渡航を試みるので、その際に翌年度分と併せて使用する計画である。
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