研究課題/領域番号 |
19K23174
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
斉藤 尚 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (20612831)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ケネス・アロー / 正義論 / 市場の限界 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ケネス・アローの正義論が経済学的手法で分析された市場及び投票の限界を示し、個人の人格の尊重という観点から社会契約論を擁護する理論であると明らかにすることにより、政治と経済の適切な関係を明示しながら、再分配のための社会契約論の意義を示すことである。アローは市場メカニズムおよび民主的な意志決定のそれぞれの制度構築に貢献する厚生経済学の基本定理と一般可能性定理を証明した。本研究はそれらの定理の規範的解釈を含めた彼の正義論を示すことで、経済学的分析を軽視する市場批判を行う再分配正義論と、市場の規範的含意を軽視する経済学の不足点を補い、双方の対話を促す。 この目的を達成するために、当該年度においては、主にアローは市場の限界をどのように定めるのかを検討した。その結果、彼は情報の非対称性および価格体系の不完全性という観点から市場の限界を示し、また倫理によって成立する社会関係の制度化として市場を捉えるものの、その制度化において特定の倫理が捨象されたと考え、その点もまた市場の限界と捉えることが明らかになった。上記の内容に関しては研究会にて報告された。 実施計画としては、英語での単著出版を計画していたが、当該年度は草稿の執筆に留まった。具体的には、章の構成の再構築をし、それぞれの章に関しても初稿を執筆したが、原稿の完成は翌年度に持ち越された。来年度には、現行の改善と完成を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の進捗状況としては、単著出版のための執筆を継続しているところである。しかし、当初より構成を変更したこともあり、計画通りには進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、引き続き執筆を継続し、来年度中には完成に至る計画である。そのため、来年度は英文校正を多用するとともに、知り合いの研究者に出版前の草稿を読んでもらい、議論をする予定である。さらに英語に関しては、英文校正のみならず、英語圏の研究者に草稿を渡し、文章および内容のチェックをしてもらう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は英語での単著出版を最終目的としている。だが、新型コロナウィルスの影響により国際会議などが延期または中止になり、海外研究者との議論ができず、そのことも理由の一つとなって原稿の執筆が予定通りに進まなかった。 次年度においては、原稿に対する英文校正料、原稿への助言をもらい議論をする研究者に対する謝礼金などとして研究費を使用する予定である。
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