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2022 年度 実績報告書

ケネス・アローの正義論

研究課題

研究課題/領域番号 19K23174
研究機関北海道大学

研究代表者

斉藤 尚  北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (20612831)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2023-03-31
キーワードケネス・アロー / 正義論 / 市場の限界 / 民主主義
研究実績の概要

本研究の目的は、ケネス・アローの研究の背景にある思想を体系化することである。その研究成果は、以下の構成による単著にまとめられた。
同著の構成は次の通りである。第一部(第一章から第五章)では、主に政治制度と倫理の関係を扱った。第一章では、アローの定理の背景を明らかにした。続いてアローの定理の内容を概略し、その含意を検討した。第二章では、アローの定理において科学的客観性をみたす数理的分析とその規範的含意がどのように両立しているかを方法論的観点から明らかにした。第三章では、アローの定理に対する批判への応答をつうじて、アローが民主的決定の結果に倫理的意義を伴わせるポピュリズムから、その意義を認めないリベラルなデモクラシー観へと移行したことを明らかにした。第四章では、アローの定理の含意の検討をつうじて、アローが政治制度は倫理にサポートされることで情報伝達を可能とすると考えることを示した。第五章では、アローが民主的決定の結果ではなく、原初状態における集団的意思決定によって正義の基準が導き出されると考えていたことを明らかにした。
第二部(第六章から第七章)では、主に経済制度と倫理の関係を扱った。第七章では、厚生経済学の基本定理と経済計算論争を概略し、基本定理はそれ自体で資本主義を擁護するわけではないが、アローは個人の自由の尊重という点から資本主義を擁護することが明らかにされた。第七章では、アローが市場の限界を多くの観点から指摘し、それを補うために倫理が必要だと考えたことが示された。
結論として、アローは一方で情報伝達の可能性という観点から資本主義と民主主義の欠点を認めながらも、その欠点を補うために個人の倫理的関係や原初状態論における正義の選択の必要性を唱えた。アローが社会主義に賛同しないのは、それが権力の腐敗を招き、個人の自由を侵害するという理由からであった。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 卓越主義リベラリズムと環境徳倫理学の接合:塩野谷祐一の福祉国家思想を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      斉藤 尚
    • 学会等名
      政治思想学会
  • [学会発表] 塩野谷祐一のロマン主義と福祉国家思想:環境倫理学との接合2022

    • 著者名/発表者名
      斉藤 尚
    • 学会等名
      経済学史学会
  • [学会発表] ケネス・アローにおける経済と倫理2022

    • 著者名/発表者名
      斉藤 尚
    • 学会等名
      経済学史学会北海道部会
  • [図書] Kenneth Arrow's Idea of Justice2023

    • 著者名/発表者名
      Nao Saito
    • 総ページ数
      -
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2023-12-25  

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