研究課題/領域番号 |
19K23175
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
大澤 傑 駿河台大学, 法学部, 助教 (40843983)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 権威主義体制 / 政治体制 / 体制変動 / 東南アジア / 経路依存性 |
研究実績の概要 |
権威主義体制の誕生とその後の権威主義体制の類型に法則性はあるのか。本研究はこの問いについて東南アジア地域を事例に定式化することを目的としている。権威主義体制が誕生する背景には、当該国家の政治経済状況が不安定化し、その危機を乗り越えるために独裁的な支配者の誕生が求められるとされてきた。しかし、その後に構築される権威主義体制の類型については、軍事支配体制、一党支配体制、個人支配体制のいずれが選択されるのか、明確な要因は十分に示されてこなかった。本研究では先行政治体制の構造が、権威主義体制が誕生する移行期におけるアクター間の権力闘争を規定し、それが後発政治体制の類型を形成するという仮説を提示し、その過程を多国間比較することによって検証する。これにより、政治体制の経路依存性を明らかにし、他地域に適用可能な体制変動の理論を導出することを目指す。 以上の目的を達成するため、2019年度は関連文献の収集および読み込みを中心に実施した。特に、本研究で扱う東南アジアの事例以外の地域における類似事例(ラテンアメリカ等)についても考察を行うことにより、本研究の主題である「権威主義体制の誕生における経路依存性」に関する地域を超えた法則性を検討するための示唆を得ることができた。これにより、来年度の現地調査をより円滑かつ効果的に実行できることが期待できる。 また、本科研費を使用してではないが、フィリピンでの現地調査も実施し、現地でしか収集できない学位論文や資料を収集することができた。残る現地調査はタイとマレーシアであり、2020年度はフィリピンで渉猟した資料との連関を意識しながら資料を収集する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね希望する文献の収集と読み込みを実施できたが、新型コロナウイルスの影響を受けて、いくつかの学会や研究会に参加することができなかった。これにより、本研究課題に対する知見を得る機会や、研究報告をする機会が失われてしまった。しかし、文献の読み込みは順調に進んでいるため、2020年度は学会報告や現地調査の機会を得て、一層研究を深めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度でおおむね進めることができた事前準備をもとに、2020年度は移行過程をめぐる事実関係(各アクターの態度など)を確認するため、残された事例であるタイ、マレーシアにおいて公文書、議事録、新聞などの一次資料の渉猟を中心とした現地調査を行う。ただし東南アジア諸国における移行期の一次資料は不足が想定されるため、それらを補完するため政治家、軍関係者、および研究者からの聞き取り調査を実施する。 新型コロナウイルスの状況にもよるが、予定している上記の現地調査は時期をずらしてでも実施したいと考えている。ただし、現地調査が難しくても、研究対象地域の研究者との連携を密に取りながら、オンラインなどを通じたインタヴューや資料収集を実施したい。 また、学会や研究会の予定も不透明ではあるが、研究報告の機会を増加させることにより、多様な意見を研究に取り入れたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は新型コロナウイルスの影響を受けて、参加予定だった学会や研究会がキャンセルとなるなど一部の予算が支出できなかった。次年度では、2019年度に収集できなかった資料の収集に加え、当初から予定していたタイとマレーシアでの現地調査を実施する。特に次年度は最終年度であることから、各事例比較を通じた権威主義体制の誕生における理論化に向けた文献の購読やインタヴューを進めていく予定である。
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