研究課題/領域番号 |
19K23176
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
佐藤 俊輔 國學院大學, 法学部, 講師 (40610291)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | EU市民権 / 人の自由移動 / 福祉国家 / 政治化 / ポピュリズム / EUの移民政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、EU市民の自由移動という国家を超えた規模でのEU内の人の移動が、各国福祉国家との間で原理的緊張を孕む点を捉え、EUの超国家的原理と各国の主権原理がどのように両者の間の調整を行っているのか、国際秩序の調整・編成問題に光を当てようとするものである。 第1年目である令和元年度(2019年度)には、第1に研究の基盤となる二次資料の収集と読み込みを行い、①EU市民の自由移動の政治化とこれに関連するEU法の解釈上の問題や論争の文脈的理解とともに、②欧州各国の実際的対応や制度的特色の事例ごとの検証、③移動するEU市民の類型、出身国内の制度とも対応するトランスナショナルな関係の諸点につきサーベイを行っており、その成果については2019年6月30日日本比較政治学会(筑波大学)、2019年7月23日グローバル・スタディーズ研究会(東京大学大学院総合文化研究所)、2020年3月21日政治学研究会・近代研究会(國學院大學)において、報告を行っている。 第2年目となる令和二年度(2020年度)には、①昨年度の実績報告書のなかで課題として触れていた通り、問題領域の広がりの大きさを受け、ひきつづき関連二次資料の広範な収集と読み込みに傾注した。具体的には、a) EU法におけるEU市民の自由移動関連判例、b) EUにおける移民や市民の移動を受けた政治化についてのEUレベル、各国比較のレベルでの研究状況の調査、c) 移民と福祉の関係に関する国際政治、移民研究、比較政治の各方面からの研究の進展を受けた広範な研究状況の調査を行い、結論としての論文執筆へ向け、基盤を整えるとともに、②論稿の投稿へ向けた執筆を開始している。 コロナ禍1年目、2年目ともに予定していた現地調査が行えず、その点で研究の射程は十全となったとは言い難いが、現在日本EU学会等の雑誌投稿を認められており、日本EU学会年報およびその他の論文誌への投稿により、成果を発信していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度掲げたように、ひとつには当初予測されたよりも問題領域の広がりが大きく、EU研究の他、国際政治学、移民研究、比較政治等の領域へと調査領域を広げる必要があったことが一因であるが、何よりもコロナ禍において、当初予定していた欧州への渡航が二年目に至ってもひきつづき中止せざるを得なかったことが大きい。 本来的には、現地での研究者との議論や、インタビュー等で得たオリジナルなデータに基づき論稿を執筆することを計画していたが、当面それが難しい中で、まずは二次資料の比重を高めながら、引き続き論文の執筆を行っていく必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
3年目に入り、日本および欧州の新型コロナウイルスの感染状況やワクチン接種の進展状況を見極め、可能であれば欧州への渡航を行ったうえで論稿に反映したいと考えているものの、現在のところその見通しは明確とは言えない状況にある。 そのため、二次資料の収集を継続しつつ、この二年間に収集した資料とそれにより培った知見とを最大限反映する形で、本格的な論稿の執筆へと移っていくこととしたい。その発信先として、現在、日本EU学会での報告と論稿の提出を予定しているが、それに加え、可能な会議、媒体を見極め、可能な限りの発信に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度支出が計画通りとならなかったのは、主として新型コロナウイルスの拡散により、計画していた海外調査・インタビューが遂行できず、旅費および謝金の支出がなされなかったことによっている。 本年度は、海外出張が可能であればそれを試みるが、そうでない場合も想定しながら、主として研究促進及び研究成果の発信に必要な支出(二次資料の購入、研究遂行・促進に必要な周辺機器の購入等)を行うこととする。
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