研究課題/領域番号 |
19K23178
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
上田 悠久 茨城大学, 人文社会科学部, 講師 (70844546)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | ホッブズ / 多元性 / 政治 / 宗教 / 啓蒙 / 実践 / 助言 |
研究実績の概要 |
まずホッブズの多元的政体論について、彼が絶対的主権を維持しつつ、政治的アクターの一定程度の自律性を容認しているとする考えを前年度までに出していたが、他の研究者からは議論が不足しているとの指摘を受けている。そのため本年度は、主権の絶対性ばかりが強調されるホッブズの議論のなかに多元性を見出す意義について、さらに考察や検討を行った。その途中経過は、紀要の研究ノートにおいて発表することができた。次にホッブズの政治、宗教思想の特徴を、「啓蒙」をキーワードとしてヒュームとの比較によって明らかにする研究を、前年度に引き続き行った。両者の影響関係を実証的に示すことには困難が伴ったが、「ホッブズは専制擁護者だが世俗化を推し進めた」という一般的なホッブズへの印象について再検討した。その結果、ホッブズの専制・暴政論、そして宗教論が、17世紀イングランド内戦の政治的コンテクストおよび政教関係の中で描かれていることを明らかにし、彼の思想のなかに知によって社会を改良する〈啓蒙〉のプロジェクトと呼びうるものを見出した。この研究については、『政治思想と啓蒙』所収の論文として公刊することができた。また、ホッブズの助言論に見出される「実践知としての政治」の意義について、アリストテレスの方法論や実践論との比較検討を行いアリストテレス研究者との共同研究として英語論文にまとめ、政治思想史研究において定評あるジャーナルに投稿することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によって活動が大幅に制限され、当初の研究計画にあった海外渡航などは実施困難であったが、国内での資料調査や研究会での情報交換など、一定の活動ができた。また日本語の研究論文を出せたほか、コロナ禍で中断していた英語論文の執筆を再開し投稿することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長することが出来たので、英語論文の採択にむけて力を注ぐとともに、国内の学会において研究成果を発信していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴い海外渡航を断念したため、差額が発生した。新年度では国内での研究活動を中心に、実施していきたい。
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