第1に、本研究の最後の成果は「風にしなう竹の外交」という従来のタイの外交言説において主流であり続けてきた考え方を批判的に検討し、「小国意識」というレンズでタイ外交史を読み直すことで、新たな分析枠組みを提示することである。第2に、タイ人の外交に対する意識構造を分析し、伝統的なタイ外交史が無視してきたアクターの主体性に着目することから、東南アジア史、タイ史の深化を図り、歴史上の人物が果たした役割の再評価が可能になる。外交史で無視ないし悪魔化されてきた主体の対外認識の論理に光を当てることで、「想像の共同体」として捉えられがちな国民国家の「違ったあり方」やナショナリズムの重層性を提示している。
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