研究課題/領域番号 |
19K23198
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
宮下 春樹 城西大学, 経済学部, 助教 (90848459)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | プレイヤーの費用負担感 / 選好進化アプローチ / CPRゲーム / n人プレイヤーゲーム |
研究実績の概要 |
有限人数からなるプレイヤーの共同資源利用ゲーム(CPRゲーム)の均衡労働供給は,プレイヤーの人数が無限の場合の均衡労働供給を上回ることを示した.2019年11月11日,城西大学経済学部において「選好進化ゲームと帰納的意思決定研究会」を実施し,この成果を報告した.本研究会は,福住多一筑波大学人文社会学系准教授,髙橋達城西大学助教,吉岡陽祐氏(筑波大学人文社会科学研究科博士後期課程)のご協力のもと実施し,選好進化モデルの研究成果を学んだ.ただし,本研究成果は,プレイヤーが2人ゲームをプレイする場合の限定的な結果であり,より一般的な分析をするため,n人プレイヤーからなるCPRゲームへの拡張を試みた.選好進化アプローチによりCPRゲームにおけるプレイヤーの費用負担感と均衡労働供給を分析した先行研究はなく,n人プレイヤーのコンテストにおけるプレイヤーの費用負担感を分析したWäynard (2012)のモデルを参考にすることとした.2020年2月27日には,筑波大学人文社会科学研究科にて,「経済学合同セミナー」を開催し,Wäynard (2012)のモデルの解説を行った.本研究会は,平山朝治筑波大学人文社会学系教授,福住准教授,髙橋助教および吉岡氏のご協力のもと実施し,理論経済学とゲーム理論の研究成果を共有した.これらの研究会を通じて,n人プレイヤーからなるCPRゲームをモデル化するために必要な変数およびパラメーターの特徴を把握した.特にプレイヤーの努力水準と費用負担感を正の実数値とすることにより,分析が容易になることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経済学合同セミナー開催後の2020年3月には,n人プレイヤーからなるCPRゲームにおいて,対戦プレイヤーの人数が大きくなるとプレイヤーの費用負担感が高まることを示した.また,均衡費用負担感が実現している場合のプレイヤーの労働供給は対戦人数が大きくなると低下することを示した.現在,これらの研究結果の示唆する経済学的なインプリケーションについて考察しつつ,論文の執筆に当たっている.同時に,論文を投稿する雑誌を検討している.研究成果の掲載に関しては計画上,2020年4月から2020年6月まで執筆および投稿期間に当てていたため,概ね計画に沿う形となった.
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今後の研究の推進方策 |
雑誌論文への投稿は,2020年8月を目途に行う予定である.投稿までに研究結果の経済学上のインプリケーションを再考するため,5月末日までに新たに洋書および和書を購入する予定である.論文投稿後の報告に関しては,数理生物学会での報告を予定している.論文投稿後の9月以降に報告の準備を開始する予定であるが,今年度はコロナウィルスの感染拡大により,オンライン会議を通じて報告する可能性が高いと思われる.同時に平山教授,福住准教授,髙橋城助教,吉岡氏にご協力いただき,筑波大学人文社会科学研究科との研究会を拡大・継続して実施していく予定である.こちらもオンライン会議を利用することを検討している.また研究会で共有した研究成果を広く公表できるよう,本研究会のホームページの作成も視野に入れている.なお,Wäynard (2012)のモデルを研究する過程で,n人プレイヤーコンテストの数学的特徴に関する知見を得た.特にプレイヤーの対戦人数が非常に大きい場合,均衡におけるプレイヤーの総努力は,コンテストにおいてプレイヤーの獲得する資源の価値に近づくことを把握した.この知見を明治大学商学部の水野勝之教授を代表とする共著書籍にて解説する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の分析結果は導出済みであるが,論文投稿に当たり,英文校正費および論文投稿料を要する.また,学会報告および研究会報告までに分析結果の経済学的なインプリケーションについて考察するため,書籍を追加で必要とする.さらに論文投稿に当たり,latexを利用するため,手引書を必要とする.学会報告の準備においては,学会費を要する.さらに学会報告および研究会報告において,旅費を必要とする見込みであり,次年度使用額が生じるに至った.
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