共同利用資源ゲームの対戦人数の違いがプレイヤー集団の均衡費用負担感のシェアに与える影響を検証した。プレイヤーたちの限界費用は、大きい場合(H)と小さい(L)場合があると想定し、均衡は通常のベイジアンナッシュ均衡を想定した。Astrid (2013)のモデルを参考にして、各プレイヤーの適応度はゲームの利得で評価できると仮定し、プレイヤー集団の限界費用のシェアを分析した。連続期間の期首にランダムに対戦プレイヤーが選ばれ、プレイヤーたちはこのゲームを繰り返しプレイすると想定した。また、期末においてランダムに参照プレイヤーが選択され、各タイプのプレイヤーは確率的に戦略を切り替えると想定した。このようにプレイヤーに限定合理的な模倣ルールを設定したところ、限界費用の高いプレイヤーと低いプレイヤーからなる定常点があることが示唆された。他方、対戦人数の大きさがこの定常点に与える影響の検証は未完了であり、また、費用負担感の分布とプレイヤーの人数に応じて共有地の悲劇が回避されるかどうかは課題として残った。 本研究では、近年ゲーム理論の中で研究が進められている間接進化アプローチを用いて共同利用資源ゲームのプレイヤー集団に定着する費用負担感の特徴づけを行った。対戦プレイヤー人数の大きさが進化的安定性を持つ費用負担感に与える影響を分析し、その費用負担感の下で共有地の悲劇が回避されるかどうかを分析した。その結果、進化的安定性を持つ費用負担感の下では、より深刻な共有地の悲劇が起きることが示唆された。これは、既存の進化ゲームの研究が示した結果と類似している。また研究の途上で、静学的なモデルを構築し、対戦人数の不確実性が存在することによって、共有地の悲劇が回避される可能性があることを示した。選好進化モデルの中でプレイヤーの対戦人数が選好に与える影響の検証は、今後関心が高まるテーマになることが予想される。
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