本研究課題を通じて、以下4つの研究プロジェクトに取り組んだ。 第一に、2014年の日本の消費増税に対する企業の価格設定行動を検証した。この論文では、消費増税の後に価格調整確率が高まったことや、価格調整確率が企業の販売商品数と関連することを示し、日本の物価変動への示唆を追究した。本稿はJournal of Macroeconomics誌(2022年6月号)に掲載受理されている。 第二に、支払価格やインフレ率が消費者の年齢とどのように関係するかについて、分析を行った。この論文では、消費者の年齢が高いほど支払価格も高い傾向がある一方で、定年退職年齢の付近でインフレ率は低くなることを示し、個人レベルでの価格異質性を検証した。本稿は国際学術誌から改訂要求を受け、再投稿されている。 第三に、中国におけるベンチャーキャピタル企業の投資ネットワークを分析した。特に、ネットワークのつながりの数(次数)がベキ分布に従うことを明らかにした。本研究課題が扱う企業・個人の異質性でもベキ分布は頻繁に登場することから、この論文は統計手法上の関わりが深いと言うことができる。本稿は東京大学の楡井誠教授、CICCのFei Yu氏との共著で、Japanese Economic Review(2021年1月号)に掲載された。 第四に、ポイント還元政策やコロナ禍におけるキャッシュレス化の進展を検証した。この論文では、ポイント還元政策の効果が事業期間を超えて長続きしていることや、コロナ禍でのキャッシュレス化の進展も相当程度に大きかったことなどを示している。本稿は一橋大学の関根敏隆教授、東京大学の渡辺努教授との共著で、東京大学金融教育研究センターからワーキングペーパーを発行している。
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