研究課題/領域番号 |
19K23206
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
阿部 貴晃 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (60848406)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 提携形成 / ゲーム理論 |
研究実績の概要 |
本研究では、協力的な提携関係の形成プロセスおよび安定性をゲーム理論の観点から分析している。 本研究の当該年度の研究成果のひとつとして、提携形成プロセスに関する理論的研究を挙げることができる。複数のプレイヤー(意思決定主体)が自分以外の誰と提携関係を形成したいかを申告した際に、実際にどのような提携構造が形成されるかについて分析を行った。より具体的には、ゲーム理論研究者S. HartとM. Kurzが発表した提携形成関数のうちGamma関数とDelta関数をいくつかの性質によって特徴づけ、さらに、この二つの関数が単調性と呼ばれる性質を満たさないことを指摘した。さらに、単調性を満たす提携形成関数を新たに提案し、いくつかの性質によって特徴づけた。この研究は査読付き国際誌にて出版された。 もう一つの成果として、提携形成プロセスと利得分配の関係性について理論的研究を行った。具体的には、Y. Sprumontが提案したPopulation Monotonic Allocation Scheme (PMAS)と呼ばれる分配計画(すなわち、提携の規模が大きくなるにつれて、各参加者に割り当てられる利得分配量が減少しない分配方法)が、Assignment gameと呼ばれるクラスにおいて、たいていの場合存在しないという問題を取り扱った。本研究では新たに、Monotonic Core Allocation Path (MCAP)と呼ばれる分配計画の概念を提案し、MCAPであればすべてのAssignment gameで存在しうることを示した。この研究も査読付き国際誌にて出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
提携形成のプロセスに関する理論的研究が、予想よりも早く結実し、スムーズに出版まで到達した点が大きかった。当該研究の内容を学会等で発表した際に、有用なコメントを獲得できたことも進展の重要な助けとなった。また研究の際に、コンピュータによって多くの数値例を計算・検証できたことも研究の進展を支えた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き理論研究を進めていく。とくに、経済・政治・社会的な現象をモデル化して、その背景にある提携の作用を明らかにしていく。具体的には、企業間の競争に伴う吸収や独立、あるいは、政党間の合併や分裂といった現象を「提携」という観点から理論化していくことを目標とする。分析の手法としては、提携形成プロセスと利得分配の関係性についての理論的研究で取り扱ったPopulation Monotonic Allocation Scheme (PMAS)と呼ばれる概念を応用することが有用であると見ている。各モデルにおいて、PMASが完全な形で存在するのか、あるいは不完全な形で存在するのかによって、提携形成のプロセスと安定性が説明できるのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(9円)は、2019年度の調達の結果生じた端数である。
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