研究課題
本研究では、協力的な提携関係の形成プロセスとその提携の安定性について、ゲーム理論の観点から分析を試みた。当該年度の成果として、三つの論文を査読付き国際誌に掲載することができた。一つ目は、ある企業が財の生産費用に関して、他の企業と差別化できるほどのアドバンテージを(例えば研究開発や企業努力によって)獲得したとき、その企業が他の企業らを吸収合併してその規模を大きくしていくインセンティブがあること、さらに他の企業らも吸収合併されるインセンティブを持ち得ること を分割関数形ゲームと呼ばれるモデルを用いて示した。二つ目は、「提携構造つき協力ゲーム」における未解決問題の解決である。利得の分配ルールがどのような性質を持てば、安定な提携構造の存在を保証できるかについて、2008年にゲーム理論研究者A.Casajusが"制約の多い"十分条件を提示していた。しかし、その条件がもつ制約を外した、"より弱い"十分条件でも安定な提携構造の存在が保証できるのではないかという予想が解決されずに残っていた。当該研究は、その予想に肯定的な答えを示し、実際により制約の弱い十分条件を提示することに成功した。三つめは、寡占や公共財の供給などの代表的な経済学的問題を提携構造の観点からモデル化した際に、一定の対称性が共通して現れることを指摘した研究である。この対称性を活用して、複数種類の経済モデルにおいて、安定な提携構造が存在するための一般的な条件を発見した。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Economics Letters
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