多くの国では自動車企業は、電気自動車の開発・生産に注力すると言われている。製品アーキテクチャの特性によってサプライヤー関係が異なるという既存研究の主張を踏まえれば、電気自動車の生産において、そのサプライヤー関係は大きな影響を受けるのであろう。このような破壊的な影響がもたらされる時に、どのようなサプライヤーがサバイバルするのか、淘汰されたサプライヤーにはどのような特徴があるのか、ということに関心を持つ。本研究は、サプライチェーンが破壊的な影響を受ける時に、どのようなサプライヤーがサバイバルするのか、という課題を明らかにしたい。 研究期間では、査読付英語論文1本、査読無日本語論文1本、査読付英語共同発表1本の成果を挙げることができた。 電気自動車の各社の競争については、競争の激しい中国の国有企業、民営企業、外資系企業の事例を用いて観察した。重要部品の調達を巡る方策は、内製重視のパターン、内製と有力企業のパートナーシップのパターンが明らかになった。 また、バイヤー・サプライヤーの相互依存性については、資源依存論に立脚する議論と、タスク関連に立脚する議論の違いを明らかにして、それぞれの源流で用いる測定指標も異なることを明らかにした。 本研究は、数多くなされてきたサプライヤー・ネットワークの構造に関する考察ではなく、サプライヤー・ネットワークの中に起きている変化を探る点が独創的である。本研究を通じて、製品アーキテクチャが変わる、あるいはサプライ・チェーンが大きく変わろうとする際に、バイヤーとサプライヤーとの相互依存性や関係の構造変化の研究がより深められると考えられる。
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