研究課題/領域番号 |
19K23216
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 宇樹 東北大学, ヨッタインフォマティクス研究センター, 特任助教 (80848078)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | ボラティリティ / 空間計量経済学 |
研究実績の概要 |
昨年度までに開発した時空間ボラティリティモデルを用いた金融データの実証分析の結果から、株式データのボラティリティのより精緻な分析を行うためには、企業間の時空間相関だけでなく、その企業が属する産業と別の産業との間の時空間相関も考慮した分析を行う必要があることがわかった。 産業間の時空間相関を考慮した時空間ボラティリティモデルを開発するための準備として、本年度はマルチレベルデータと呼ばれるデータを分析するための新たな空間計量経済学モデルの開発を行った。 アンケートデータに代表されるようなマルチレベルデータという形式のデータの特徴は複数の観測個体が1つのグループに属しているという点である。今後明らかにしたいと考えているのは、いくつかの企業が属している産業の間の時空間相関であったので、マルチレベルデータを分析するための新たな空間計量経済学モデルを開発することは産業間の時空間相関を考慮した時空間ボラティリティモデルの開発への足がかりとなる。 既存の時空間計量経済学モデルは1つの地域に1つの観測個体が存在するデータにのみ応用が可能なため、マルチレベルデータの分析には直接応用することはできない。本研究では、地域レベルの構造と個体レベルの構造を同時にモデル化した新たな時空間計量経済学モデルを提案することで、既存モデルとマルチレベルデータの間のギャップを解消した。提案したモデルを、大規模調査データの分析に応用することで、ある地域での政策が隣接地域に住む人々の主観的幸福度にどの程度の時空間波及効果をもたらすのかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は空間統計学モデルとファイナンス統計学モデルの一つであるボラティリティモデルを融合した時空間ボラティリティモデルを開発し、金融商品間のボラティリティの時空間波及効果の分析を行うことである。 昨年度までは空間統計学の重要なツールの一つである空間重み行列を多変量ボラティリティモデルに応用することで、新たな多変量ボラティリティモデルの開発を行った。開発した時空間ボラティリティモデルを株価データに応用した結果から、ボラティリティのより精緻な分析を行うためには、企業間の時空間相関だけでなく、その企業が属する産業と別の産業との間の時空間相関も考慮した分析を行う必要があることがわかった。 本年度は産業間の時空間相関といったクラスター単位での空間相関を考慮した実証分析を行うためのモデルを開発するための準備として、マルチレベルデータのための空間計量経済学モデルの開発を行った。提案したモデルを、大規模調査データの分析に応用することで、ある地域での政策が隣接地域に住む人々の主観的幸福度にどの程度の時空間波及効果をもたらすのかを明らかにした。 来年度は本年度開発したマルチレベルデータのための空間計量経済学モデルをボラティリティモデルへと拡張することで、企業間のボラティリティの時空間相関だけでなく、その企業が属する産業と別の産業との間の時空間相関も考慮した分析を行うことが可能な新たな時空間ボラティリティモデルの開発を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の目的は本年度開発したマルチレベルデータのための空間計量経済学モデルをボラティリティモデルへと拡張した新たな時空間ボラティリティモデルの開発を行うことである。開発したモデルを株式データの分析に応用することで、企業間のボラティリティの時空間相関だけでなく、その企業が属する産業と別の産業との間の時空間相関も考慮した分析を行うことを可能になる。 本年度開発したマルチレベルデータのための空間計量経済学モデルではこれまでの空間計量経済学モデルでは難しかった、個人の特性を考慮した上で、個人が所属しているクラスター間の空間相関を分析することが可能になっている。しかし、開発したモデルはデータの平均構造の空間相関を捉えるためのモデルである。本研究の目的であったボラティリティの時空間相関の分析を行うためには、データの分散構造の空間相関を分析する必要がある。来年度は今年度開発したモデルをデータの分散構造の空間相関を分析するためのモデルへと拡張することで、新たな時空間時空間ボラティリティモデルの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルスの影響で参加を予定していた国際学会などが中止になった。そのため、海外学会に参加するための費用として考えていた予算の繰り越しが発生した。来年度も参加を予定していた国際学会の一部がオンライン開催となることがすでに確定しているため、繰り越した予算は海外旅費ではなく、より大規模なデータを分析するためのPCの購入やオンライン開催された国際学会での議論などを通して得られた研究成果を論文にする際の英文校正費として使用する予定である。
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