裁判の遅延は、和解交渉における訴訟当事者間の交渉力の優位性を歪め、司法制度の機能を低下させる。本研究では、裁判の遅延が、和解までにかかる時間への影響を推定した。裁判遅延がもたらす影響は、被告が責を負うか否かであるかによって異なる影響があることを実証的に示した。本研究での実証結果を説明可能な経済モデルは既存文献に存在しないため、実証結果に整合的な動学的交渉モデルを構築、定式化した。裁判の遅れによって有責である被告を除く当事者が全て不幸になることを示し、「裁判の遅延は正義の否定に等しい(Justice Delayed is Justice Denied)」という法の格言を経済モデルを用いて示した。
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