本研究は、これまで統一的には理解されてこなかった、結婚する・しない、親と同居する・しないという家計の基本的な成り立ち方が、どのようなマクロ的要因に規定されているのかを理解することが目的である。具体的には、同居を通じた家計における規模の経済や男女間賃金格差、女性の社会的交渉力といった家計の形態を左右しうる要因のうち、いずれが定量的に大きな影響をあたえるのかを、日本を第一の例にとりながら異質的な経済主体を含むマクロ経済モデルの構築を通じて明らかにしようとするものである。 実証的な成果としては、まず、国勢調査のマイクロデータによって、学歴別に結婚する・しない、親と同居する・しないという日本の家計の形態の分布について精緻に推定し、結婚後も特に夫の親との同居が相当存在することを確かめた。あわせて、就業構造基本調査のマイクロデータを分析することにより、世帯内で介護が行われている家計を除いても家計の形態の分布にはあまり変化がないことも明らかにした。さらに、全国消費実態調査のマイクロデータにより、日本の家計においては同居を通じた家計内における規模の経済の効果が比較的強いことを明らかにした。 こうした実証的な分析結果をもとに、マクロ経済モデルによる分析を行ったところ、家計内における規模の経済の効果や女性の社会的な交渉力は家計の形態の分布に大きく影響を与える一方で、男女間の賃金格差による影響は限定的であることが示唆された。
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