研究課題/領域番号 |
19K23222
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
入谷 聡子 東洋大学, 経済学部, 助教 (40848107)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | アフリカ / エチオピア / 農業技術 / 技術伝播 |
研究実績の概要 |
エチオピアでは農業部門は66%の労働力を吸収する根幹産業であるが、低い灌漑整備率や低い改良種子・肥料の使用率等により、土地生産性は停滞している。先行研究は、改良種子の採用によって、短期的には収益を上げることができたとしても長期的には、持続的な厚生向上に繋がっているのかという問いについて、十分に検討されていない。本研究は、継続した改良種子の採用とその世帯の消費へ与える影響を明らかにし、近代農業技術の採用が持続的な収益量の増加をもたらすための条件について検討する。
具体的には本研究は、①改良種子を採用する期間と収益について把握し、②採用期間が長い世帯はどのような特性を持っているのか、③採用期間が長いほど貧困削減につながるのか、検証している。 本年度はの遊牧民居住県9県を除く、エチオピア農村地域を代表した、世帯レベルのパネルデータであるEthiopia Socioeconomic Survey:ESS (2011-2015) を使った実証分析をおこなった。ESSでは期間中一貫して、メイズ・小麦・大麦・テフいずれかの高収量品種の採用をしなかった世帯が3,444世帯(種子の種類について回答している世帯の41%)と一番多く、その次が期間中一貫して採用を行った世帯で507世帯(上記世帯の6%)であった。残りは年に応じて、採用を行ったり取りやめたりした世帯であった。各年度の高収量品種の採用の有無、世帯属性をコントロールし、収穫量を推定した。全ての年で高収量品種を採用していた世帯は、一貫して高収量品種を採用しなかった世帯と比べ、収穫量が大幅に増加していた。また初年度は採用しなかったが、次年度の両年で採用を行った世帯も収穫量が増加していた。一方、その他の年によって採用を行ったり、取りやめた世帯の収穫量と採用頻度の間には一貫した有意な相関は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型肺炎感染拡大により渡航を自粛したため、収集予定であった農業やインフラのデータが手に入れなかったため、計量分析の進捗が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長したため、2022年度が本研究課題の最終年度となるが、新型肺炎の感染拡大の収束が見えないことから、手元にある既存のデータを利用し、再検証を行う。その際、各種地理データを活用し、前述の高収量品種採用の内生性に対処したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型肺炎感染いまだ収束せず、またエチオピア国での治安悪化によって、実施を予定していたフィールド調査を中止せざるを得なかったため、次年度使用額1,529,059円が生じた。最終年度となる2022年度は、可能な範囲で現地の協力者と連絡を取り、データ収集を行うとともに、既存のデータを用いた分析手法の選択をし、研究成果を出すために助成金を使用する。
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