研究課題/領域番号 |
19K23224
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高畠 哲也 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 助教 (80846949)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 確率ボラティリティ / 非整数Brown運動 / 高頻度観測 |
研究実績の概要 |
本年度は、対数ボラティリティ過程を駆動させる非整数Brown運動のHurst指数に関する検定統計量の構成と構成した検定統計量の漸近分布を導出するために研究を行なった。具体的には、対数ボラティリティ過程を駆動させる非整数Brown運動のHurst指数とボラティリティを同時推定するための擬似尤度を、対数実現分散時系列に関する中心極限定理、および対数実現分散時系列の差分列の局所近似により導出される擬似尤度と擬似尤度のWhittle近似(擬似Whittle尤度)に基づき導出し、導出した擬似Whittle尤度を用いて尤度比検定統計量を構成した。その後、対数実現分散の計測誤差と非整数Brown運動とのスケール比に関するあるバランス条件の下、構成した擬似Whittle尤度に基づく尤度比検定統計量の漸近分布を、対数ボラティリティ過程のドリフト項がなくかつ非整数Brown運動の長期記憶性(Hurst指数が1/2より大きい)を帰無仮説とした場合に導出した。更に、レバレッジ効果を取り入れた枠組みで数値実験を行い、有限標本下での推定量の推定精度を詳細に調べた。その後、上記スケール比に関するバランス条件を緩めるべく、正規型の観測誤差を含む非整数Brown運動の高頻度観測時系列から定まる尤度比確率場の漸近挙動の解析、そして漸近挙動を調べるために必要となる正規型確率ベクトルの二次形式のキュムラントに関する極限定理について研究を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高頻度観測の状況において、観測誤差の標準偏差の大きさが非整数Brown運動の標準偏差の大きさに対して相対的に大きい場合には、未知定数に関する識別可能性を有す推定関数(または推定関数に類似した役割を担う適切な関数)の極限が既存手法では導出できなかったため、研究方法を尤度比確率場の分布収束と大偏差不等式を利用した一般論を経由する方法に変更し、その結果想定以上の時間が必要になったから。
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今後の研究の推進方策 |
正規型の観測誤差を含む非整数Brown運動の高頻度観測時系列から定まる尤度比確率場に対する分布収束と大偏差不等式を示すために必要となる極限定理を導出すべく研究を継続して行なっていく。その後、得られた極限定理を用いて、尤度型の推定量の漸近的性質の証明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初参加予定であった研究集会の中止・延期やオンラインでの開催が行われたため。繰り越した資金は、国内外の研究集会への参加・出張費やオンラインでの研究発表を行うための設備投資の費用などに利用する予定である。
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