研究課題/領域番号 |
19K23224
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高畠 哲也 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 助教 (80846949)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 非整数Brown運動 / 高頻度データ / 確率ボラティリティモデル |
研究実績の概要 |
本年度は、対数ボラティリティ過程がトレンド項を持つ非整数Brown運動である場合において、非整数Brown運動のHurst指数とボラティリティに対する尤度型推定量の漸近挙動を明らかにすべく研究を行った。具体的には、①ドリフト項を持つ非整数Brown運動の高頻度観測データに基づく疑似尤度型推定量の漸近挙動の解析、②非整数Ornstein-Uhlenbeck過程の連続観測データに基づく平均回帰係数と平均回帰水準の漸近有効推定、③観測誤差を含む非整数Brown運動の高頻度観測データに基づく非整数Brown運動のHurst指数とボラティリティの漸近有効推定について主に研究を行った。 ①の研究に関しては、定数ドリフトの場合にドリフト項に影響されず非整数Brown運動のHurst指数とボラティリティを推定する方法を、高頻度観測時系列の差分系列に対する局所正規近似と尤度関数の周波数領域での近似(Whittle近似)を組み合わせて構成し、構成した推定量の一致性・漸近正規性を証明することに成功した。②の研究に関しては、Hurst指数が1/2より小さい場合に、非整数Ornstein-Uhlenbeck過程の平均回帰係数と平均回帰水準に対する最尤推定量の一致性・漸近正規性・漸近有効性を証明することに成功した。③の研究に関しては、推定量の極限を導出するために必要な極限定理をパラメータ空間に関するある制約のもと証明することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】でも述べたように、対数ボラティリティ過程が直接観測できる場合におけるいくつかのまとまった研究成果が得られたため。また、③の研究を行う上で問題となっていた多変量正規分布に従う確率ベクトルの二次形式のキュムラントに関する極限定理を改良することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
定数ドリフトの場合に得られた疑似尤度型推定量の漸近的性質に関する研究成果を、非整数Ornstein-Uhlenbeck過程を含むより一般のドリフト関数の場合へ拡張することを試みる。また観測誤差を含む高頻度観測データから非整数Brown運動のHurst指数とボラティリティを漸近有効推定する方法について継続して研究を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた研究協力者との研究打ち合わせが実施できなかったため、一部資金を繰り越した。繰り越した資金は、国内外の研究集会への参加・出張費や延期していた研究協力者との研究打ち合わせ費用などに利用する予定である。
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