研究課題/領域番号 |
19K23228
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
小原 拓也 東北学院大学, 経済学部, 講師 (40848173)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 人的資本投資 / 再分配政策 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、実証研究の結果に沿って育児時間を人的資本投資とみなし、その下での経済成長への影響を考慮した最適な再分配政策を理論的かつ定量的に明らかにすることである。 今年度は経済成長を考慮した再分配政策の分析まで進めることができなかったため、人的資本投資である育児時間を考慮した下での再分配政策のモデル構築とその下での望ましい再分配政策の分析を行った。モデルの構築にあたっては、再分配政策の経済成長への影響を考察するために、家計の行動から出生数と育児時間が内生的に決定されるモデルを構築した。再分配政策による労働供給人口と一人当たり労働供給の変化を通じて、経済成長への影響を考察できる。さらに近年の実証研究に基づき家族の育児時間に対する非協力行動を反映した。 本研究から得られた結果は主に以下の3つにまとめられる。第1に、家族の非協力行動は育児時間だけでなく出生数も非効率的に過小にする。第2に、家族の非協力行動による育児時間と出生数の低下を改善するためには、子供補助ではなく、所得課税による再分配政策が望ましいことが明らかになった。この結果は、再分配政策が育児時間と出生数を改善するという経路を通じて経済成長にどのように影響するのか本研究の枠組みから分析が可能であることを示唆している。第3に、家族の非協力行動によって出生数が低下する場合には子供補助ではなく、むしろ子供課税が望ましくなり、再分配政策の効率性への歪みを軽減する役割を担う。この結果は、経済成長を促進するためには再分配政策だけでなく子供課税との組み合わせたがより望ましいということを示唆するかもしれない。 来年度は経済成長理論を今年度構築した理論モデルに反映し、どのような再分配政策を実行すべきか規範的に明らかにする。さらに、人的資本投資を喚起し経済成長をもたらす上で最適な再分配政策を定量的に明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の研究課題を遂行するためには動学的な枠組みで分析される経済成長理論を導入する必要がある。しかし申請者の専門分野である最適課税理論は静学的な枠組みで分析されることが多く、動学モデルへの拡張に時間を要してしまい計画通りに進めることができなかった。来年度は経済成長理論の枠組みを取り込み、再分配政策と経済成長の関係性を計画に沿って分析する。
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今後の研究の推進方策 |
大きく2つの段階に分けて今後は研究を進める。まずは、これまで得られたモデル分析に経済成長理論モデルを取り入れ、理論結果を導出する。特に、最適な再分配政策における税体系の公式を特徴づける。次に、理論分析で得られた公式から、データを用いて最適な再分配政策に関する定量分析を行い、政策的に実用な結果を導出する。以上の2点に取り組むことで当初の研究計画を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において研究の進捗がやや遅れたことで論文の完成に至らず、英文校閲への支出が来年度に繰り越されたことが原因である。次年度使用額は翌年度分として請求した助成金の一部と合わせて英文校閲に使用する予定である。
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