研究課題
最終年度においては、前年度実施した人的資本投資である育児時間を考慮した下での再分配政策のモデル構築とその下での望ましい再分配政策の特徴づけに関する研究の拡張と数値計算を試みた。具体的には、外部施設の利用をモデルに反映することで夫婦が労働と育児を両立可能な状況へと拡張し、政府の外部施設への補助が子供の人的資本形成にどのように寄与するのか明らかにした。さらに前年度の研究結果も踏まえて、望ましい再分配政策の水準や様々なパラメータの変化による最適な税率や補助率の変化を定量的に明らかにした。本研究から得られた結果は主に以下の3つにまとめられる。第1に、外部施設が利用可能であっても夫婦の間での非協力による育児時間の過小供給の問題は解決しない。第2に、第1の結果から政府は効率性の観点から外部施設に補助をすることは望ましくない。これは前年度の結果と合わせると、家族内の非協力行動による育児時間と出生数の低下を改善するためには、所得課税による再分配政策が望ましく、子供に対しては課税、外部施設には介入すべきではないと結論づけられる。第3に、様々なパラメータ設定における最適な所得税率と子供税率の水準を、数値計算を用いて導出した。これまでの研究成果を踏まえると、適切な再分配政策によって夫婦の非協力行動による育児時間の過小供給の問題を緩和することで子供の質と数の両方が改善されるので、結果的に経済成長が促進されることが理論的に推察される。しかし、研究助成期間内で経済成長理論の枠組みを組み合わせることで、そのような再分配政策による経済成長への影響を理論的かつ定量的に明らかにすることができなかったため、この点に関しては今後の進展が待たれる。
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Discussion Paper Series, School of Economics, Kwansei Gakuin University
巻: 211 ページ: 1-65
Tokyo Center for Economic Research (TCER) Working Paper Series
巻: E-157 ページ: 1-59