本研究課題では、チェーン小売企業の店舗存続/撤退の規定要因を明らかにするべく、実証研究を行った。特に、この規定要因として、チェーン小売企業の組織能力要因として、需要不確実性を統制する「在庫調整能力」と、店舗の立地要因として、「地域 (都道府県) 内の他社店舗数および自社店舗数」に注目した。 本年度は、上記の要因が店舗の撤退確率に及ぼす影響を実証的に検討するため、分析の下準備としてパネルデータを構築した。GMSチェーン13社の店舗を分析対象に設定し、これらの店舗が2004年~2008年のあいだに撤退したかを観察し、二次データを利用して、分析に必要なデータの収集と変数の操作化を行った。 分析の結果、小売企業の在庫調整能力の高低によって、店舗が存続しやすい立地環境が異なることが確認された。具体的には、①在庫調整能力の高い企業は、多数の企業の店舗がひしめく競争的な地域においても、自社店舗が多数出店するドミナントな地域でも、店舗存続の可能性が高いこと、②他方、在庫調整能力の低い企業は、自社店舗が多いほど、店舗存続の可能性が高いことが、それぞれ示唆された。 本申請課題の研究成果は、ますます競争が熾烈化する小売市場において、店舗が生き残れるか否かの明暗を分ける要因の一端を明らかにするとともに、企業の組織能力と立地環境の選択が密接に関連しうることを示唆するものであり、本研究を通して、今後の新たな学術的課題と実務的なインプリケーションを得ることができた。
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