本研究では、畜産業という視点から、戦時期に日本の勢力圏で農業経済システムが再編されていく過程を検討した。農林省と陸軍省および拓務省、そして台湾総督府が策定した馬の増殖を目指す台湾馬政計画(1936年~)を機に、台湾総督府内では畜産部門の体制が強化され、台湾での体制強化は軍部が主導する華南占領地の畜産事業運営にも大きく関わっていた。今回は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初期した研究計画の全てを消化することはできなかったが、戦時期の華南占領地において軍部と台湾総督府および台湾拓殖株式会社が主となって進展させた畜産部門の運営実態と、旧来の農業経済システムが再編される過程の一側面を明らかにした。
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