研究課題/領域番号 |
19K23238
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
若松 直幸 中央大学, 経済学部, 助教 (50847340)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | デイヴィッド・リカード / 経済学方法論 |
研究実績の概要 |
本研究代表者は、2021年度に「リカードウの重層的方法 ー賃金課税と外国補助金の考察 」という表題でリカードの方法に関する報告を行った(第255回経済学史研究会)が、そこで得たコメントに基づいて、リカード方法論研究を2つの方向に進展することができた。 第一に、リカードの経済学は単純な原理を基盤としながら条件次第で様々な結果をもたらすという点について、2021年度の報告より簡潔にまとめ、それを2023年1月にsurvey論文「2000年代以降の国内外のリカードウ研究」(『経済学史研究』 64巻2号, pp. 45-67 2023年1月)第IV節において論文化した。 第二に、2021年度の報告で論じたリカードの賃金課税論に関する数理モデルは、必ずしもリカードの経済体系と合致しない可能性があると指摘された。そこで、リカードの経済成長論のモデルとして認められた、カサローサのリカード・モデルに基づいてリカードの賃金課税論に関する分析を行い、条件次第で理論の結果が変わるということを数理モデルでも示した。この研究は、2023年3月に'Ricardo and the Origin of Dynamic Tax Analysis'というタイトルで報告された(International Workshop on Classical Political Economy 2023)。 他方で、2022年度はリカードの方法の基礎について論じる機会があり、マルクスやスラッファの経済学とも比較する形で、「資本主義の把握において階級概念はいかなる意味で本質的かーリカードウ、マルクス、スラッファ」(『経済学史入門ー経済学方法論からのアプローチ』第4章)として執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の進捗状況が遅れている理由として、次の理由を挙げることができる。 第一に、2021年度に行われた研究報告に基づいて、2022年度は、主としてリカードの方法について分析し直す必要が生じていた。結果的にこれらの問題は解決に向かっているが、他方で、依然としてリカード派の方法の考察に十分な時間を割くことができていないという状況にある。 第二に、2020年から猛威を振るっていた新型コロナウイルス感染症の問題を挙げることができる。当該感染症問題のために、2022年度においても、特に海外での学会発表への参加が困難な状況であった。本研究課題の遂行にあたり、海外での研究報告の実施・内容の改訂を予定していたため、そうした手段がとれなかったことが本研究課題遂行に大きな影響を及ぼしている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題については、今後以下のように進めていくことを予定している。 第一に、カサローサのリカード・モデルに基づくリカードの賃金課税論に関する研究については、2023年6月にThe 26th Annual Conference of the European Society for the History of Economic Thought (ESHET)で報告が予定されている。そこでの報告を終えたのち、当該研究を海外の学術誌に投稿する。 第二に、ジェームズ・ミルやジョン・スチュアート・ミルの方法について、リカードの方法と比較する形で研究を行い、研究報告、論文化を行っていく。こちらについては、時間の制約もあり、2023年度内の論文化は難しいかもしれないが、少なくとも研究の骨子ができるところまでは研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、二つ挙げることができる。 第一に、2021年度に引き続き、2022年度においても、予定されていた本研究課題と関連する出張(特に海外出張)が、新型コロナウイルス感染症問題のためにできなくなり、旅費などの使用ができなかったため。 第二に、本研究は基本的に海外での研究報告実施後に加筆・修正し、英文校正にかけることを予定していたが、第一の理由により海外報告ができなくなったことから研究計画に大幅な遅れが生じており、それに伴い、2021年度と同様に、2022年度もあらかじめ予定されていた支出が行えない状況となっていたため。 2023年度の助成金の使用計画としては、主に国際学会への参加を中心に考えている。2023年6月にヨーロッパ経済学史学会(ESHET)での報告を予定しており、残りの助成金の大部分が、当該出張とその後の国際誌への投稿に充てられることが予定されている。他方で、2023年度に新たな研究にも着手するので、当該研究遂行に必要な書籍等の購入も行う。
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