本研究の主な研究結果は以下の2つのテーマである。 (1) 通貨同盟に参加することは、通貨の自律性を失うと同時に金融政策の信頼性を高める可能性がある。本研究では、このような通貨同盟への加盟のメリットに着目し、加盟国の離脱予想の外生的な上昇が通貨同盟の最適設計に与える影響を分析した。本モデルにおいては退出確率が高まるほど、経済的背景が異なる加盟国の通貨圏への参加比率が高くすることが望ましくなる。本研究は全米経済学会において発表され、現在学術雑誌において査読中である。(2)通貨統合からの離脱が共通通貨の信頼性に与える影響について分析した。本通貨同盟モデルにおいては、共通通貨のインフレ率が産出ショックに関して異質な加盟国の間の多数決によって決定される。加盟国が退出を決定した場合、固定的な社会的コストを支払う必要があり、個別に自国通貨のインフレ率を選択する。このモデルにおいて、最適な金融政策は、通貨同盟から離脱する国が存在しない場合のみであることを示した。本研究はGamesに掲載された。
本研究から得られた知見を活用し、以下のような派生的な研究成果を得た。 (1)本研究が取り扱う金融危機と関連し、感染症動学を組み込んだ資産価格モデルを開発した。。本研究は、Research in International Business and Financeに掲載された。また、ワクチン接種者数の増加が金融市場に与える影響を分析した。本研究はPLOS ONEに掲載された。(2) 不確実性に関連し、ナイト的不確実性がインフォーマルな資産移転に与える負の影響に関して研究した。本研究はApplied Economics Lettersに掲載された。また、住宅市場における親族間のリスクシェアリングに関する知見を得た。本研究はJournal of Public Economic Theoryに掲載された。
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