本研究においては、インドからの移民が日本経済に与える相互互恵的な連関的影響について検討することが企図されていたが、Covid-19が蔓延する状況下において、インドと日本の労働力の移動は極度に少なくなった。さらに、インド国内では、格差と貧困が移民の中に構造的に保持され、移民が感染不安を惹起する社会心理的なスティグマとして認知されることにより、長期的な経済発展の阻害要因となりうる危険性がよりいっそう堅持される結果となった。 インドは高成長過程にありながら、顕著な階層による格差が存在するため、今般のパンデミックに起因する社会的不利益は、移住労働者と移住家計に過大に集中したと考えられる。一方で、移民労働者の多い経済的に脆弱な事業者と労働者を対象として、迅速で網羅的な社会保障・給付が先例のない環境下で導入された社会保障政策が試行されている。 貧困緩和と所得不平等是正という観点に依拠すると、デジタル政策には平等性と迅速性という社会包摂的な利点があるものの、所与の教育資本と物的資本双方からの機会排除的な不平等が存在するという欠点がある。本研究においては、インドにおいてCovid-19が移住労働者へ及ぼした社会・経済的影響と、施行された諸政策の有効性に対する経済的分析を行うことにより、移民を中心とする経済的後進家計の社会包摂を深化させ、グローバル社会におけるレジリエンスを保持するために有効なデジタル政策についての検討を行った。 しかし、Covid-19による予測を超える経済・社会的なショックは実質的に、もっとも脆弱な社会集団の一つである移民クラスタに過大に集中した。最も重要なファイナンス手段が失われた低所得移民の上方モビリティが失われると同時に、社会・経済的的連帯構造的硬直性へのへの懸念が強く立ち上がる結果となった。
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