本研究の目的は、青森県岩木川河川敷管理をはじめとする各地の実践事例に基づいて、どうすれば環境ガバナンスがダイナミズムを有しながらも維持されるのかを考察し、その要件を抽出することである。 本研究では、次のように調査を行った。2019年度には、岩木川の河川敷管理に関連して国土交通省や中泊町役場、地域住民へのヒアリング調査を実施したほか、大阪府高槻市鵜殿地区での河川敷管理について、高槻市役所へのヒアリング調査を実施した。2020年度は、新型コロナウィルス感染症の影響で現地調査を実施することはできなかったものの、質的データ分析ソフトを活用して既存データの分析を進めたほか、農地管理や再生可能エネルギー事業などにおける環境ガバナンスの事例との比較検討を進め、環境ガバナンスの分析理論に関して考察を深めた。2021年度は、4月に実施された岩木川河川敷でのヨシ原への火入れ管理の参与観察を行ったほか、地域住民や国土交通省へのヒアリングを実施して現場への理解を深め、理論的な考察を深めた。 これらをもとに,環境ガバナンスの継続には、立場や価値観、行動原理が異なる場合でも大枠の目標を一致させることが有効であること、またプロセスの中での対立を成員交代などによって解消していくことが重要であることを示した。また、こうしたガバナンスに地域社会が関わり続ける上で、時間を組み直すことの重要性を明らかにした。現代の地域社会は縮小傾向にあり、未来展望を持って環境管理を行うことが難しくなっている。これに対して、環境ガバナンスのプロセスを通じて他の利害関係者の持つ展望や将来設計を共有することにより、地域社会の時間認識を見直し、組み直すことが、地域社会の再編を促し、地域環境への主体的な関わりを展望し続けるための契機になりうることを示した。
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